「空気人形」には、「銀町」（現実では「湊」）を高いところから見下ろしたシーンがいくつか出てきます。
町の俯瞰場面は、のぞみが最初に町に出た日にビルの屋上から町を見渡すところにもあります。しかし、さらに広い範囲をとらえている俯瞰シーンには、のぞみが屋上に立った「岡ビル」も下に見えています。

これは「銀町」の全体像を把握できるので興味あるシーンです。
さて、このシーンはどこから撮影されたのでしょうか。

ヒントは俯瞰シーンに写った遠方のビルです。これらのビルを眺めてみると、遠くのビルの角とより近いビルの角がほぼ一直線上に並んで見えるところがあります。　ある方向に見える２つのビルの角を結ぶ直線と、別の方向に見える2つのビルの角を結ぶ直線を考えます。　これらの２本の直線が交わるところにカメラが置いてあるはずです。

映画の俯瞰シーンの画像から次の４つのビルを選び、A1とA2、および B1とB2を結ぶ２つの直線の交点を探してみました。（下図）

この第１オゾンビルは、2012年前後に撮影されたと思われるグーグルマップスの衛星写真や、 2009年12月撮影のグーグルストリートビューで確認できました。

そこで、2013年6月に私が最初に湊の町を訪問した時に撮影した周辺の写真を確認しました。　ところが、第１オゾンビルの西側向かいのマンション「ヴェルト銀座イースト」は確認できるのですが、第１オゾンビルが写っていません。　はて？

1990年に完成した鉄筋コンクリートのビルが、30年も経っていないのに壊されているというのも不自然なので、9月に現地へ行って真相を調べてみました。

すると、何と！　ビルは壊されて、右の画像の様に大きな穴が開いていました。
どうやら、2013年の早いうちに取り壊しが行われたようです。　2013年9月の時点では新しいマンションビルの建造が行われており、現地では第１オゾンビルの時（たぶん）の古い杭がむき出しの状態でした。

2013年9月に隅田川対岸から撮影した写真に、第１オゾンビルと俯瞰シーンの撮影地点と思われる位置を記入してみました。
右の画像のように、ビルは湊の町と隅田川一帯が見渡せる位置にありました。

ビルの位置は、ストリートビューを参考に作成しました。（本文下部に示す「隅田川から」の画像）　ストリートビューで、中央部に見える「ヴェルト銀座イースト」の手前に見える塔屋のあるビルが第１オゾンビルです。（ストリートビューの画像は将来更新されることがあります）

ところで、映画の中にもこの第１オゾンビルを離れたところから撮影したシーンがありました。

のぞみがその最初の日にビルの屋上に上り、自分の町を見渡したシーンです。
右図のような感じです。　のぞみが「岡ビル」屋上を南の方角に向かう場面の背景に、第１オゾンビルがしっかりと写っています。

この画像からも、俯瞰シーンの撮影地点が「ヴェルト銀座イースト」ではなく、「第１オゾンビル」であったことがわかります。　画像に見えるビルの位置関係から、もし、「ヴェルト銀座イースト」からの撮影であったならば、俯瞰シーンには「第１オゾンビル」の塔屋も写っていなければならないのです。

2013年半ばの第１オゾンビル跡地の様子は右の画像のようになっています。
（ロケ地マップの「町の俯瞰」の項目の画像の再掲）

●中央の塔屋があるビルが第１オゾンビル

• 隅田川から
• 2010年8月撮影