弁護士 中坊公平(97年10月NHKTV番組3回シリーズ) 中村三郎
「私は机の上で法律を振り回すに強くない。」
「いつも必ず現場を見て事実を調べるようにしています。」
<森永砒素ミルク事件,裁判の欠点>
「私は当時貧乏でしたから,いわゆる金儲け優先の企業弁護士であったので依頼者に
頼まれたものの二の足を踏んでいたのですが,同じ弁護士の先輩,父に相談してやって
みようという気になったのが事実です。最初からそんなにりっぱな志があって引き受け
たわけではありませんでした。」…と言うが,話が進むにつれ,当時の被害者の実態を
思いだしたためか時々涙ぐむ。
① 行政と違い裁判は不器用 (特に救済の点)
② 既判力が最小限に限られてしまう。(訴50人,被害2万人)
③ 訴えないとやらない。 (2万人が訴えられない)
被害者側の要請で,救済優先のため判決によらず和解とした。それで良かった。
もし判決にいけば企業の製造物責任を問えた先駆的な裁判であったかも知れないが。と
インタビュアーの質問に答える。
<豊田商事詐欺事件>
破産管財人就任の際に裁判所の債権者と呼称して下さいとの要請を断わり,被害者と
呼ぶ主張をして受け入れられる。債権者保護でなく被害者救済である。
① 金(きん)を紙で渡す現物まがい商法の登場。
② 行為の各部分は一見小さい問題で適正に見えるが全体で見ると悪。
③ 消費者保護は口先だけ。 (行政/司法/立法とも)
非合法であれ所得があれば課税対象は分かるが,公序良俗違反部分は会社の所得にあ
らずと主張し税務署に何度もかけあって所得税を返還してもらい被害者に分配。
<豊島産業廃棄物不法投棄事件>
時効寸前で頼まれる。全島民の一致団結と自ら行動することが引受けの条件。
① 香川県が産廃処分場申請を取下げミミズ養殖として申請した業者を許可。
実態は産廃中間処分と不法投棄。
② 香川県が実際は全量50万トンなのに16万トンと称し,うち有害物のみ2万トンを除去
するのみで終了宣言。
③ 島民側が自ら調査を要する訴えによらず,国に公害調停を申立てて国に実態調査を
してもらって判明,8案を提案頂いた。香川県は現状のままとする8案を,島民側は現
物を県外にそのまま運ぶ3案を主張→1案を私が説得。1案は島に新たな排煙公害をも
たらすが島で十数年がかりで再度焼却後,県外に運ぶ案。
誰もが嫌がることは自分に理不尽な災難であっても,自分が一切背負わずに他に全部
転嫁するのは誰にも受け入れられない。一端を担った上で他者に良く理解してもらうし
かない。私の死ぬまでの仕事になるかも知れない。と述べた。
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