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雑草のささやき          ’99.05.16 神々の詩

 人は花を愛でる。
花は必ずしも人にやさしくない。

人の目を避け、ひっそりと咲くタンポポ。
はからずも人の目に立つアスファルトのすき間のタンポポ。
  … 通りがかりの靴に踏みつぶされてしまうタンポポ。

アリに花を尽くむしばまれ、他の花と結婚をあきらめたタンポポ。
ハチに花粉を運んでもらい、結婚をなしとげ、実を結ぶタンポポ。
すべては、「風」が決めるタンポポの次のいのちの住む地。

 人の為に花は咲かない。
花は次のいのちを育むために咲く。どんな場所に置かれても。

アゲハの幼虫に葉を食べさせ、味を記憶させたサンショウは、成虫
になったアゲハ蝶に花粉を運んでもらう。
虫と契約を結ばず、虫の為の美味な葉や美しい花や甘い蜜を用意せず、
次のいのちのための結婚も途方に不確実な、「風」に委ねる花もある。

 美しい花を咲かせない花を人は雑草と呼ぶ。
しかし、花を咲かせない雑草はない。

 人に踏みつけられても立ち上がり、
結婚の希いをかけて花を咲かせるタンポポ。

<感想>
不幸な女をさらに根こそぎ搾り取るアリのような男でなく、ささやかで
はあるが束の間の幸せを与えられるハチのような男になりたい。
 … と自分は考える。                中村三郎