『四季薫るふるさとにある鷲が峰』    
序文ジョブン
 
土橋螢さんがこの度、二十七年の川柳作品を振り返り、三月四日〜十一日、 鳥取市のギャラリーあんどうと三月十二日〜十八日、鹿野町しかの心で「晴 耕雨読」一螢の書展を開催される。その記念品として川柳作品集を発刊され る。誠におめでたいし、嬉しい事だ。   
芸術のこころを癒す墨をする
 
川柳句集のタイトルは「晴耕雨読」誠に羨ましいタイトルではあるが、私はこれに多書、多作をプラスしたい。それ程、螢さんの書、川柳に対する情 熱は深いのである。鹿野川柳街道の句木の書は正に芸術である。   
惜しまれて死ぬ武士道を知っている
鳥取のある川柳大会で初めて螢さんの披講を聞いた時、この人は侍の心を 持っていると思ったものである。鷲峰山のふところのやさしさと、日本海の 怒濤の静と動を見事に合わせ持っておられるのだ。   
昭和史の陰から飛んできた螢
真珠湾七十回忌に黙祷
螢さんは特攻隊の生き残りであるこの二つの作品を重ねて、もう一度読んでみると、戦争を知らない私でも涙が溢れてくる。そして飛んできた螢にし みじみと螢という雅号を思うのである。   
にんげんにもどれる水をもう一杯
 
竹原川柳会会員でもある螢さんは、この作品の原句を川柳たけはらに発表
されている。  
その後推敲に推敲を重ねられてこの作品に落ち着いたのだと思われる。
  
雪達磨春を迎えに行ったきり
  
父ははのうしろの山に雪が降る
  
木枯らしや死んではならぬ人が死ぬ
  
人生双六八十歳はひと休み
  
反省をしている虫が鳴いている
 
私は、これらの作品に螢川柳の真骨頂を見た思いがする。螢さんは今、八十三歳、螢川柳はまだまだこれからなのだ…。  
句集「晴耕雨読」の発刊を心からお祝い申し上げる。
   
平成二十四年一月
       
川柳塔社主幹 小島蘭幸