| 後もどりできぬ処に来て仕舞う | ||||||
| 洗ってもおちない垢がついている | ||||||
| あと五年生きよと五年日記買う | ||||||
| 安穏の世に魂を置き忘れ | ||||||
| あなたからもらった愛をよく磨く | ||||||
| あっという間に八十歳になり | ||||||
| 愛という価値を認めて恋になる | ||||||
| 愛していると心にもないことを言う | ||||||
| 新しい花芽をつけた長寿梅 | ||||||
| 悪人が仏の道をまっしぐら | ||||||
| 足の向く方に幸福落ちている | ||||||
| 生かされて生きる男の黒い影 | ||||||
| いのちより大事な仏さんがいる | ||||||
| 一月は天から白いものがふる | ||||||
| 一日一善珈琲をのんでから | ||||||
| 生きざまを金に頼らぬ命なら | ||||||
| 一年は短く長くなるいのち | ||||||
| 一番前の真ん中に俺がいる | ||||||
| 威張っても孫とおんなじ背の高さ | ||||||
| 一番に十分の一秒差 | ||||||
| 言いたいことはそれだけか雨がふる | ||||||
| 生きている人間だけが通る道 | ||||||
| 遺伝子をゆすってみても財はなし | ||||||
| 美しくあり虚しくあり十二月 | ||||||
| うぐいすが啼いたと母が春を呼ぶ | ||||||
| 美しい女の前で煙草吸う | ||||||
| うれし涙を溜めている壷がある | ||||||
| 梅干しがふたつでてくるにぎりめし | ||||||
| 惜しまれて死ぬ武士道を知っている | ||||||
| おふくろの味が元気を出せという | ||||||
| 沖の方ばかり眺めて日が暮れる | ||||||
| 驚いている我が齢と生きざまと | ||||||
| お寺から仏になれる話聞く | ||||||
| 男より強い女と酒をのむ | ||||||
| 男にもおんなにもある春の色 | ||||||
| おめでたいメール春には産むという | ||||||
| 押しつけられた会長は名誉職 | ||||||
| 恩返しできない分を供養せよ | ||||||
| 惜しまれて死ぬ武士道を知っている | ||||||
| 鴛鴦がくるみずうみの大掃除 | ||||||