| 荒城の月尺八を吹き鳴らす | ||||||||||||
| 恋しい女にたましいの置きどころ | ||||||||||||
| さまよっている職がない金がない | ||||||||||||
| 歳月を笑い話で語り継ぐ | ||||||||||||
| さむらいの無念を知っている桜 | ||||||||||||
| 信頼のうしろの月が美しい | ||||||||||||
| 七難八苦楽しいことが待っている | ||||||||||||
| 昭和史を伝承させる寺の鐘 | ||||||||||||
| 人生の階段ひとつずつ昇る | ||||||||||||
| 死ぬことを追いかけながら志なし | ||||||||||||
| 人生双六八十歳はひと休み | ||||||||||||
| じゃんけんで決める地獄か極楽か | ||||||||||||
| 昭和史の陰から飛んできた蛍 | ||||||||||||
| 昭和一桁戦争の負け残り | ||||||||||||
| 死ぬことが難しいから生きている | ||||||||||||
| 四苦八苦してぎりぎりの快楽かな | ||||||||||||
| 小説の女と恋に落ちてゆく | ||||||||||||
| 死ぬことを忘れて仕舞う誕生日 | ||||||||||||
| 親鸞を祖とする縁で忙しい | ||||||||||||
| 東雲に合掌いのち新しく | ||||||||||||
| 死にたくない死にたくないと年惜しむ | ||||||||||||
| 順番がきたと兎が目をさます | ||||||||||||
| 真実が見えない夢が邪魔をする | ||||||||||||
| 城跡を公園にして桜咲く | ||||||||||||
| ショウガ焼き食べた男の味がする | ||||||||||||
| 死の美学鯛を殺して焼いて食う | ||||||||||||
| 少年のときに鍛えた力瘤 | ||||||||||||
| 死ぬことを忘れて飯を食っている | ||||||||||||
| 真珠湾七十回忌に黙祷 | ||||||||||||
| 真珠湾七十年忌に黙祷 | ||||||||||||
| 十五夜に唐変木が立っている | ||||||||||||
| 人生のあかり消したりともしたり | ||||||||||||
| 社会福祉の役員はボランティア | ||||||||||||
| 地獄にも人が入れる門がある | ||||||||||||
| 真実を探して歩く月あかり | ||||||||||||
| 尻尾隠して善人の真似をする | ||||||||||||
| 双六のあがりに鳴いたホーホケキョ | ||||||||||||
| 滑りどめつけてこの世の地獄ゆく | ||||||||||||
| スタートに並ぶ男の血が滾る | ||||||||||||
| 切腹をしたことがない腹を撫で | ||||||||||||
| すこしずつ幸福だけをつまみ食い | ||||||||||||
| 戦争と平和昭和は遠くなり | ||||||||||||
| 生と死は夢まぼろしの中にあり | ||||||||||||
| 正座して合掌をする刑もある | ||||||||||||
| 責任を担いで今日も出て行った | ||||||||||||
| 葬送の曲はゆっくり海ゆかば | ||||||||||||
| 損得が五本の指にからみつく | ||||||||||||