2008年3月の日記

2008/3/30(Sun):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』5続
「おはよぅーっす……」
我ながら完璧にヤル気の無い声だが、仕方ない。今日はまた花粉が一段と厳しいんだから。
この前のヒノカが襲撃事件以来、校舎に入ったらマスクと保護メガネを外すようにしたけれど、
それでも既に目が痒い鼻がうずいと今日はかなり重症だ。
「よぅ、おはようさん」
「おや、今日はもう来ないのかとばかり」
そう言うヒノカの手にはサンドイッチが。あれ、サンドウィッチ、だっけ?
まぁようするに、既に時刻はお昼時。それもちょっと遅いくらいだ。
「まぁちょっと、ね」
特に大した理由が有るわけではないけど、勿体付けてみる。
だけどもヒノカは「そうかそうか」と何やら必要以上に納得した様子をしてた。
多分何もかもお見通されてるんだろうなぁ。
イチヨシは――
「またヤキソバパンの具を整列させてる…………」
イチヨシが奇妙珍妙なのはよく分かっているけれど、いったいヤキソバパンに挟まれた茶色くて細丸い炭水化物の
いったい何が君に其処まで整然とした配置と光景を求めさせると言うんだい。
「購買でパンを買ってきたかと思えば、唐突に『今日こそ俺はやりとげてみせるよ!?』などと言い出してな。
 こう言うときの男子はどうしようも無い程に何を考えているのか理解出来ないね。
 脳に、女子が持ってない妙な部位が発達しているんだろうか?」
「そんな謎機関が発達しているのはイチヨシだけだと思うな…………
 逆に言うと、イチヨシの脳に謎部位が発達している可能性を否定できない僕が居るわけだけど」
「それもそうか。何せイチヨシだも――へちゅん」

――ん?

「イチヨシだものな。全てその一言で片が付きそうなのがへちゅんっ!」
…………ヒノカって姉御系キャラの割にくしゃみは可愛いんだね?
いやそうじゃなくて。
「何だ急に……ぅ、何やら目元がムズムズして――まさか?」
そう言っている間にもみるみる涙目になっていくヒノカ。ううむ、実に新鮮かつ可愛らしいなぁ。
普段が格好良い人だから尚さr――いやそうじゃなくて。
「……どうやら間違いなさそうだね。ようこそヒノカ。僕の世界へ」
「むぅ……何と言う事だ。健康かつ健全な私でも花粉症に罹るものなのだな」

こうしてまた一人、この国に呪われた人が産まれちゃいましたよジーザス。

――――――此処から日記――――――

と言うわけで体調崩したり風邪ひいたり仕事が大変だったりで丸二週間空きと相成りました。
一番気軽(と言うか手癖と言うか)な花粉小説ですらこれですから、他の作品も勿論進んでません。
と言うか、ヘルザ村とかもうちょっとと言うところで停まりぱなしですし……
あぁ、もっとしっかりせねば。と今まで何回言ってきた事でしょうか。

何かもうちょっと強い動機が有れば良いのですが……さて。
2008/3/16(Sun):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』5

いつもと同じバス停で、いつもと同じ路線に乗っていつも通りにICパスをかざして乗り込む。
いつもと違う時間ではあるけれど、いつもと同じ席から見えるのはいつもと同じ風景。
そう、見上げれば今日も空は黄色い淀みに日光を散らされている。

僕が産まれる前から叫ばれ続けていた”地球温暖化”とやらは、結局僕が産まれて16年半経った今でも
笑えるくらい効果の薄い対処療法だけで皆に、主に経済界のエラい人達に満足されていた。
その結果に消失した島国が僕が教えられただけでも6ヶ国。きっと、聞いた事のない国が他にも消えている。
冬も短くなった。らしい。僕が産まれる前と比べて、の話だから実感の無い知識だけど。
そして短くなった冬と今までの春との間に、”冬明”と呼ばれる季節とも時期とも付かない名前が付いた。
冬よりは寒さが厳しくなく、春よりは涼しい、もどかしい気温が続く冬明になると、この国は一斉に花粉に襲われる。
厳密に言えば、花粉と隣の国から飛んでくる細かい砂の粒と他にもイロイロ有るらしいけど、覚えたくなかったので忘れた。
そんな環境が産まれてしまった現代では”花粉症”は既に国民病として認知されていて、
具体的に言うと罹病率31%と言う数字に置き換えられる。
で、政治的に無視できぬ話題になった”花粉症”は、もはや花粉のみが原因ではないとかなんとかで、
”多種微粒子因アレルギー性総合粘膜炎”と言う政治的な呼称を定められている。
でもそんな無駄に長くて分かりにくい名前なんて浸透するはずもなく、僕らにとってはずっと”花粉症”だ。
……一応、この国民総花粉症進行を食い止める、あるいは解消する手だてが無い訳じゃ無いらしい。
ただし、その為には国内の政治家と隣の国の政治家たちに既存権益を放棄させる必要がある、と言う素敵な条件付き。
くそったれな母国と政治家どもに乾杯☆ ってとこだね。

まだバスは学校に着かない。その間にも僕は完全防護の下でくしゃみを重ねている。
同じ花粉症に悩まされるのなら、学校でヒノカやイチヨシと遊んだり予習したりの方がずっと楽だ。
少なくとも気は晴れてくれる。
またくしゃみが出た。

ふと空を見上げてみたけれど、空が青くなっているなんて奇跡は其処に無かった。
2008/3/14(Fri):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』4
教室のドアを元気よく開ける。
あぁ、心にこれほどの晴れやかなる境地があったなんて!!
「ぐっもーにんえぶりばーでぃ!」
「あぁおはよう。今日は朝から随分とご機嫌じゃないか」
「当たり前だよヒノカ!今日のこの良い天気でご機嫌にならない訳が無いでしょう?」
普段は毛筋程も開けさせたりやしない窓を、今日はむしろ僕が積極的に開けたりしてみる。
教室の窓を開け放った途端、力強く地を打つ雨音が教室に響き始めた。
「世間一般的には、この強い雨脚を”良い天気”とは表現しないようだが?」
「世間は世間、僕は僕!」
今の僕は最高にハイってやつだ。どれくらいハイかと言うと歌って踊ってらんらんるー、ってくらい。
「それと一説では雨の後は飛散する花粉の量が増えらしいな。本当かどうか調べた事はないが」
「……ヒノカ。いつ訪れるか分からない明日よりも、輝かしい今日を堪能しよう!
 今日と言う今日は二度と訪れない今日なんだよ!?」
「ハイテンションの余りに言語野とかその他脳機能に異常をきたしてるぞ。まるで普段のイチヨシみたいだ」
「いやだなぁヒノカ。それじゃまるで僕が変態みたいじゃないかっ……そういやそのイチヨシは?」
ヒノカの口から名前を聞くまで綺麗すっぱり忘れてた。教室には居ないみt――
「其処に居るぞ?」
あ、いた。でもなんでまたそんな教室の隅っこでガタガタブルブル震えながら神様にお祈りしてるのさ?
「フトモモコワイフトモモコワイ神様仏様ヒノカ様ショウジキスマンカッタだから許しtッアー!?」
「……ねぇヒノカ。どうしたら彼処まで強烈に生まれたてのトラウマを堪能出来るの?」
「なに、ちょっと二十九回ほど豚のような悲鳴をあげさせてやっただけだ。昨日のリクエストどおり私のふとももで、な」
ねぇヒノカ、僕はときどき友達であるはずの君がたまらなく恐くなるよ。なんでだろうね

――――ここから日記――――

と言うわけで新感覚花粉小説(ただしちっとも新しくない)も気がついたら既に計五回、四話分ですね。
梳野自身ここまで伸びる気が、と言うか伸ばす気が全く無かったはずなのにどういうことでしょうか。
ともあれそれなりには公表いただいている様なので、アイデア切れするまではもうちょっと続けてみようと思います。
完全に行き当たりばったりなので、書いてる本人ですら何処まで続くか分からないと言う恐怖。あな恐ろしや。

久々にWeb拍手など。

>SSの更新が楽しみです。…と言っても訪問してるのは週一くらいな訳ですけども。
>幸運を掴んだ感想…。幸運があったとしてもそれを感じれるかどうかは自分次第なので…
>よしっ、今日はなんかいいことある!と、何かしらに結びつけて前向きに生きます!(それも後解釈ですが)
>…なんか微妙にひねくれてる気もしますが。  
ようこそインターネットの辺境へ。楽しんで頂けてるようで恐悦です。
ここ最近の更新速度が異常なだけで、実際はそれ程の訪問が適正かと思われます。
それもそれで問題アリなのですが……(;´Д`)
拍手を貰った日付的には既に良い事が有ったかどうか判明しているころでしょうか。如何でしたか?
もし大した幸運に巡り会えなかったならば、梳野の方でモテラ・モチェプ神へと祈りを捧げておきますね。
どうぞ良き週末を。

ヾ(*゚Д゚)ノシ はんべらー!うんべらー!

:[注意書き]
当HP管理人「宮内 梳野」はときどき手の付けられない変人です。用量・用法をご確認の上正しくお使い下さい。
2008/3/11(Tue):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』3続

「……ん?」
おっかしーなー僕何か彼女を怒らせるような事をしただろうかと言うかそもそも
怒ってるからと最速でタマを殺りに来るようなアグレッシブな性格じゃ無かったんだけどそう言えばまだ僕生きてますよ。

ふと意識が外界に戻ると、ガチで拳を振りかぶっていた彼女の表情が今度は「何か気になる」に変わっていた。
そしておもむろに人中を打ち抜くはずだった手が僕の顔を掴む。いや、厳密には僕が顔に付けていたモノを。
くい、くいっ、とそれをずらして、彼女は納得したような表情を見せた。
「……不審者にしては妙に見慣れている気がしたが、キミだったのか。道理で」
なるほど。つまり貴女はこの
『花粉シャットール(立体裁断マスク』と『Wクリアメガネ(保護メガネ』
で完全装備していた僕が誰だか分からなかったと仰るわけですね?
「酷いよヒノカ。なんで僕が不審者扱いされるのさ……」
「普段の君が、立ち振る舞いに限れば立派に挙動不審だからだ。それこそ人相を隠したら不振人物の手本になれるくらい、な」
あー、僕はいま泣いても良いのかな?良いよね?
「でも私がはやとちりしたのは確かに悪かった。だから――」
そこまで言いかけて、ヒノカは上体を前に倒すと僕の顔を挟むように床へ手を付いた。立ち上がためなんだろう。
でも僕の肩の上に膝を付いてる、と言うか押さえ込んでるから息をのむ程間近にYシャツの白い楽園がー!?
「……よっと」
いやなんで僕の上で姿勢を整えますかヒノカさん。
僕の薄弱極まりない大胸筋に大変な感触がするし主観視界で下側には危ういひらめきが見えましt何か両頬がふにって!!
「あああああああの、ヒノ、ヒ、ヒノカ?」
「お詫びと言っては何だが、もう少し君の上に乗っていよう。ドキドキワクワクな私の感触を堪能してくれたまえ。
 なんなら”覗いて”も良いよ?」
「僕が人として終わる前にお願いだから退いてヒノカー!!(泣」
「ナニそれ!ずるい!俺も俺もー!!」
イチヨシ貴様あの状況がどれだけ危険か分かってないなコンチクショウ。何だかナチュラルに殺意が沸いてきたっ。
「イチヨシも……か?」
ヒノカが怪訝極まりない顔でイチヨシを見る。いやいやヒノカ、そこはもっと侮蔑して良い所だよ?
「うむ!俺もハァハァしたいー!」
「……」
「……まぁ、私は別に構わんが」
構おうよ!?
「しかし、イチヨシも変わった趣味があるんだな。奇襲の危険に晒されて興奮するとは相当だぞ?」
「ナニソレ」
僕もヒノカの発言が理解できない。どういう介錯でそうなるんだ?
「誤解に基づいて行った奇襲でコイツに迷惑をかけたからこそ、今のサービスタイムだ。
 よって私の過失が存在しなければドキドキサービスも成立しない。
 必然、イチヨシが私にねだっているのは単に出会い頭の奇襲でしか無いわけだ」
論理が無茶苦茶だよヒノカ良いぞもっとやれ。
「や、俺はもっとこうフトモモとかこう、性的に興奮したいのですが」
「心配しなくても、思う存分に豚のような悲鳴をあげさせてやる。明日が楽しみだな?」

明日は完全防護止めとこうかな。何やら雨が降るとか言ってたし。
2008/3/10(Mon):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』3
坂道を一歩ずつ学校へと向かう。
いつもならば憂鬱、と言うかそれどころですらない必死な登校の一コマだけど今日の僕は一味違った。
坂道を登り切ると目の前には我が母校。相変わらず人の気配は殆ど無い。まぁ、自由登校期間だから当然なのだけど。
そんな事はさておいて正門を通って昇降口、階段といつも通りのルートを教室まで歩く。
校内に入ったら実は生徒が一杯。と言うサプライズが有るわけもなく、しんとした校舎の中に僕の足音だけが響いていく。
普通なら、ここでおもむろに教室のドアを開けたところで誰も居ないはずだ。

だけど僕だけは、いや、”僕ら”だけは知っている。人気の無い校舎だけど、此処には毎日必ず一人と一人と一人が居る事を。

そうやって僕は、教室のドアを開けた。
ゆっくりと中に入って振り返るのは後方窓際、そこに四つの机を向かい合わせて三人分の指定席が用意されている。
そこに座ってるのは、見慣れたイチヨシの顔と――
「――広辞苑」
いや違う広辞苑は人の顔じゃないしそもそもこんなに急激に膨らんだりってもしかしてコレ飛来中?
「おぅわっ!?」
仰け反りと捻りの複合技にしゃがみを加えて、強度と重量に優れた投擲兵器をどうにか回避する僕。
直後にどすっ、と壁から良い感じに重い音が響き、直撃したときに迎えていただろう僕の未来を教えてくれた。
「いったい何が」
と呟きかけて、更なる異音に気づく。敢えて表現すると机の上を力強く誰かが駆け抜けてくる様な音だ。
「え”」
改めて振り向いた時にはもう足音が停まっていて、その代わりに翻るスカートとライムグリーンの三角形が見える。
その直後には肩から踏み倒される形で既にマウントポジションを奪われていた。
イッタイナニガドウナッテマスカ。
そんな疑問を口にする間もなく、見上げる僕の視界の中で彼女の拳が既に顔の横まで振り上げられちゃってますよ。

――うん、これは死んだね?

2008/3/7(Fri):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』2
三月。
朝晩は流石にまだ寒いけど、昼間のそれも良く晴れた日の日向ともなれば中々に快適だ。
特に今日は風が殆ど吹いていないから、久々にやってきた屋上もくつろぐには悪くない。
「そろそろ本格的に春だぇっしょい!!」
空気を読まないくしゃみが人のセリフを遮りやがりましたよ奥さん。
ほらこう言っている間にも二発目が。
あーm三回目。四回m五k六。
「…………ねぇイチヨシ。いつも思うんだけどさ」
一緒に屋上へとやってきた友人に声をかける。しかし我が友は聞いてるのか聞いてないのか分からないよF××k!
「なんで花粉ってのはこんなに人を苦しめるんだろうねぇ。
 大体、花粉花粉って皆は言うけれど、実際に花粉を見た事なんか無いよ?
 そもそも花粉ってのは本当に存在しているのかな」
「そりゃお前、目に見えないモノなんて幾らでも有るだろうよ。
 世論とか、ウィルスとか、放射線とか大宇宙の意志とかな」
「なんだよそれ!つまり僕らはいつも目に見えないモノにばかり踊らされてるって事じゃないか!
 どうしようイチヨシ!?」
「踊ってれば良いんじゃね? 踊らせてる奴が度肝抜かす位に強く激しく踊ればいーんじゃね?」
「やだよメンドイ」
イチヨシの提案を一蹴して寝転がる。イチヨシはイチヨシで気にした様子もなく、
購買で買ってきたヤキソバパンのヤキソバを一本ずつ抜き出して並べる作業に没頭していた。
いつもながら変な奴だと思う。
まぁそれを言うならば、三月の後半丸々が自由登校なこの時期にわざわざ学校にいる僕も僕なのだが。
ともあれ、見上げた空は穏やかで日差しは暖かい。人の少ない学校は平和と呼ぶにも静かすぎる。実に良い気分だ。

この目元を無性に痒くさせる、花粉さえ無ければ、の話なのだけど。
2008/3/6(Thu):『ヒノキスギノキ時々ヤルキ』
冬とは絶望である。
その寒さは人々が講じるあらゆる手をすり抜け、万人を区別無く蹂躙し犯しつくして屈服させていく。
そうして服従させられた人々に為す術はなく、ただ背中を丸めて何処までも寂しく耐えるだけなのだ。
しかし世に不変無く、冬もまたしかり。
耐えに耐えて耐え抜いて、耐える事に慣れきった人々を待ちかまえたかの如く、
その福音は微かに、しかし確実に人々に語りかけて己の実存を呼びかけていく。

しかしその福音こそが罠である。

福音は喜びであるかも知れない。しかし福音は拷問を引き連れて訪れるのだ。
人々が風に福音を見いだした時、悪魔もまた其処に慄然と存在している。
風に乗ってやってくる、と言うと何処ぞなくファンシーでメルヒェンな響きだが
実際のところそんな可愛らしく受け取るにその自然現象はあまりにも凶悪で無慈悲だ。

「具体的に言うと花粉症で死にかけている訳なのだけどさ」
「そうか。介錯は必要か?」

そして友人という者もまた花粉と同じくらい無慈悲だ。
2008/3/4(Tue):新感覚花粉小説
……瞬発力だけで発想して展開させたあげくに整理してしまう思考癖をどうにかしたい今日この頃です。
タイトルまで用意しちゃっても、中身が無いと言う根本的な問題をどうしようもなく。
またこの癖がたまに真っ当なプロットに仕上がる事も有るので質が悪いと言うかなんともはや。
2008/3/3(Mon):花粉の季節
気がついたらもう三月と言うか二週間経過してたと言いますか。
何故か梳野主観ではまだ二月の最中の筈なのですがいったい何がどうなってるのやら?
ともあれ、次第に気温が暖かくなってきて体が楽になってきました。
花粉症の時期を超えたら少しは活動出来る……と良いのですがどうなるやら(;´Д`)

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