あったもの:ガリ版 がりばん
とじる
2017-08-31: 内容を更新・追加しました。

先生が作(つく)るテストの用紙(ようし)や配布物(はいふぶつ)などはガリ版(がりばん)で印刷(いんさつ)されていました。  ガリ版の正式(せいしき)な名前(なまえ)は謄写版(とうしゃばん)といいます。「謄写」とは「かきうつす」という意味です。

ロウが薄(うす)く塗(ぬ)られた「原紙」(げんし)に文字や絵を描(か)き、印刷(いんさつ)の原版(げんばん)にします。 原紙に文字などを描くには、原紙を専用(せんよう)の鉄製(てつせい)の細(こま)かい「ヤスリ」の板(いた)の上にのせ、 先がとがった鉄(てつ)でできている「鉄筆」(てっぴつ)で原紙(げんし)の上をひっかきます。 すると、ひっかいた部分(ぶぶん)のロウがとれます。  原紙の上でロウがある部分はインクをはじきますが、ロウが取れた部分(文字や絵が描いてある部分)はインクが通ります。 toUpperRight

fromLowerLeft  できあがった原版を細かい網(あみ)を張ってある枠(わく)にはり付けて印刷(いんさつ)したい紙(かみ)の上にかさね、 原版の上からゴムのローラーでインクをうすくのばすと、 ロウがとれたところだけインクがしみ出して紙に印刷(いんさつ)ができます。

私が百合小で見たガリ版印刷機は手動式(しゅどうしき)で、1枚づつ印刷(いんさつ)していました。 クラスの人数分(にんずうぶん)(50人くらい)だけ印刷するのもかなり大変(たいへん)そうですが、 なれるとすごく速(はや)く印刷できました。 私も先生のおてつだいや飼育係(しいくがかり)の仕事(しごと)で、原版(げんばん)づくりや印刷をやりました。

»  ウェブ上にある「ガリ版」の画像 

偶然(ぐうぜん)手元に残っていた当時のガリ版印刷物がありますので、写真で紹介します。

当時ガリ版で印刷されたもの

1968年(S.43) 夏休み(なつやすみ)の飼育当番表(しいくとうばんひょう)♦  白い画用紙(がようし)にガリ版で印刷(いんさつ)してあります。  50年近くたっても、インクの色(いろ)がしっかりとのこっていて、ちゃんと読(よ)めます。

インクは油性(ゆせい)のやわらかい絵の具(えのぐ)のようなもので、どんぶりくらいの大きな缶(かん)に入っていて、 必要(ひつよう)な量(りょう)を少しづつヘラで出して使っていました。  ヘラでインクを平らなトレイの上に広げ、ごみ取りの「コロコロローラー」みたいなゴムのローラーで薄く同じ厚さに伸ばします。  これでローラーの表面にもインクが薄くくっつきます。 紙の上に置いた原版(げんばん=原紙に文字などを描いたもの)の上でこのローラーを転がしてインクを紙に写します。 ヤスリと鉄筆で原紙に開けた「孔」(あな)を通してインクが紙にしみこむのです。

原版は四角い枠(わく)に取り付けられたとても細かい網(あみ)の上にはりつけてあり、1枚印刷するごとに枠を持ち上げて印刷済みの紙を取り出し、 また枠を下げて新しい紙の上に置いてローラーを転がすという動作を繰り返して印刷します。 基本は(右利きの人は)右手でローラー、左手で枠の上げ下げと印刷済みの紙のめくりを行いますが、 なれると枠にはさわらずにローラーの上下で枠の上下も行い、より早く印刷できました。(枠はバネの力で自動で上がります)

ローラーにインクをつけすぎると、文字のまわりに油(あぶら)がにじんでしまいました。  ローラーに適量(てきりょう)のインクを薄(うす)くむらなく伸ばして、さらに高速に印刷するにはそれなりの技術が必要でした。

当時は、ウサギ、ニワトリ、ホロホロ鳥などを校庭の飼育小屋(しいくごや)でかっていて、 夏休み中などは飼育係のこどもたちが交代で動物の世話をしていました。  休みに学校に来るのを忘れたら動物はごはんぬきになってしまうという重要任務(じゅようにんむ)です。
長期の休み以外の日曜日や祝日は宿直の先生(当時は安全管理のために先生が交代で学校に泊まった)か 用務員(ようむいん)さんが動物の世話をしてくれたのかな。

⇓一部拡大(いちぶおおきく)

1967年(S.42) 7月の箱根林間学校の冊子(さっし=しおり)にあった日程表(にっていひょう)♦  冊子は40ページほどあり、活字(かつじ)で印刷されたものです。  その中の日程表のページにまちがいがあったらしく、 印刷されたページの上にこのガリ版刷りの日程表が重ねてはってありました。

日光に当たらずに保存(ほぞん)されていました。 紙の変色(へんしょく)はありますが、ガリ版印刷の文字はきれいにのこっています。  文字の部分を拡大(かくだい)してみても、インクの油のにじみがわからないほどきれいに印刷されています。

私が五年生の時の林間学校です。 百合小から箱根まで「箱根登山バス」でゆきました。

このときの写真が!
»「学校の門」で、 この林間学校への出発時の様子の写真を紹介しています。 たまたまこの時の林間学校の冊子が残っていました。

日程表には「レクリェーション」と「リエクレーション」の2つのかきかたがみられます。  あわてていたのでしょうか。   ちなみに現代の辞書(じじょ)には「レクリエーション」「レクリェーション」「リクリエーション」の3つの書き方がありました。

箱根では「金時山」(きんときやま)に登り乙女峠(おとめとうげ)を歩きましたが、 水筒(すいとう)の水が足りなくてとてものどがかわいたのを思い出します。  下山して旅館(りょかん)に帰り着いた時に用意されていたビン入りの牛乳がとてもおいしかった思い出。

「金時山」は金太郎の伝説(でんせつ)で有名な山。  「まさかりかついで金太郎…」の童謡(どうよう)に出てくる足柄山(あしがらやま)は、 金時山を含む一帯(いったい)の山地の名前だそうです。

冊子は「林間学校 はこね 1967」で、川崎市立小学校行事教育研究会発行となっています。  内容は持ち物の注意に始まって、小田原を通る箱根までのみちすじにある場所や名所(めいしょ)の紹介(しょうかい)、 箱根の自然(植物・火山など)の解説(かいせつ)、旅館での食事メニュー、 「レクリエーション」タイム用の歌の歌詞(かし)やゲーム(もちろんデジタルではなく)のやり方、 夜見える星座(せいざ)の紹介、などなど。 40ページ情報満載(じょうほうまんさい)です。

林間学校の行われた1967年7月21,22,23日は、金、土、日曜日でした。  先生たちも大変ですね。

1968年(S.43) 冬休み(ふゆやすみ)ドッジボール大会のおしらせ♦  日の光が当たらないところに保存されていたものです。わら半紙(わらばんし)が変色しているものの、印刷文字はしっかりとのこっています。

「わら半紙」は、コピー用紙など真っ白い上質紙(じょうしつし)よりやや品質(ひんしつ)がひくい紙で、 ざらざらしていて新品でもうすい茶色をしていました。 上質紙より安いのでたくさん使う学校ではよく使われていました。  現在も売っていますが、コピー用紙より使われる数が少ないので逆(ぎゃく)に値段は高くなっているようです。

現在の麻生区東百合丘1丁目にある中台(ちゅうだい)住宅地にあった空き地で行われたドッジボール大会のおしらせチラシです。  父兄が作ったものと思いますが、『日時(にちじ)』のふりがながまちがっているのはカンベンしてあげてください。  「ドッチボール」は「ドッジボール」と同じで両方の言い方があります。

 ● 「東百合丘1丁目」は、1972年に川崎が政令指定都市(せいれいしていとし)になる前は「川崎市生田」

「東栄(とうえい)ストアー」も「松沢商店」も現在はもう閉店し、建物も残っていません。 「あき地」には家が建っています。

その後、鉄筆ではなくて普通(ふつう)のボールペンで書くことができる原紙とか、 できあがった原版(げんばん)を取(と)り付ければ自動的(じどうてき)に印刷できる機械(きかい)などが出てきました。

さらに普通(ふつう)の紙(かみ)にペンで書いた原稿(げんこう)から原版を作ることができるファックスににた機械もありました。 これらが小学校で広く使われるようになったのは、私が卒業(そつぎょう)した後(あと)のことだったと思います。

そのころ、ゼロックスのコピー機械(きかい)はありましたが、まだまだ高価(こうか)で、 大きな会社とか国の役所(やくしょ)でもないと使えませんでした。  学校で普通(ふつう)にコピー機械が使えるようになるのはかなり後のことだったと思います。

私が大学にいたころには、前に書いた「ボールペン原紙」や紙に書いた原稿から原版を作る「謄写(とうしゃ)ファックス」という機械を使うことがよくありました。  toUpperRight

fromLowerLeft  そのころでも、まだパソコンやワープロ(=ワードプロセッサ;今のパソコンの「ワード」のような機能(きのう)だけを持ったパソコンのようなもの) は世の中には出ていませんでした。

現在(げんざい)ではゼロックスなどのコピー機械(きかい)や大量(たいりょう)に 安く印刷できるリソグラフなどが学校で使われていると思います。

このリソグラフは、デジタル読み取り機で読み取った原稿をもとに、専用(せんよう)の原紙(マスターと呼ぶそうです)に文字や絵柄(えがら)どおりの小さな穴(あな)を開けて そこからインクをしみださせて印刷するものです。 この種類(しゅるい)の印刷方法は孔版印刷(こうはんいんさつ)と呼ばれます。  孔版の「孔」は「あな」という意味(いみ)です。  「孔のあけかた」は鉄筆から熱(ねつ)を使うサーマルヘッドに変わりましたが、 昔(むかし)のガリ版と同じ原理(げんり)を使ったものです。

【文章作成・修正:2017-08】