03 慌しくキッド達が教室を出て行くのを見送る俺に、マカが怪訝な顔で問いかける。 「…何?キッド君と何かあったの?」 「………いや、別に」 曖昧に言葉を濁す。 実際のところ、本当に何もないのだからなんとも答えようがないのだけれど。 さっきまで仲良さそうにしてたのに、と訝しむマカ。 そうだ、確かに先程まではいつも通りだったはずなのに。 キッドのシンメトリー癖をからかって、でもマジで死にそうな顔してたからちょっと助けてやるかと思っただけで。 「どうせまたくだらない事言って怒らせたんでしょ」 後でちゃんと謝りなさいよ、と呆れたようにマカが言う。 謝るって何をだ。 間接キスしてごめん、とか?バカか。 そんなこと言えるわけが無いっつーか、そもそもあんなのは間接キスのうちにも入らねーだろ。 そう笑い飛ばすか、何事も無かったようにスルーするか、あるいは大げさに嫌がってみせるとか。 方法は色々あったはずなのに、あいつがあんな風に過剰反応するから。 (…意外に柔らかかった、とか) 指に残る感触を変に意識してしまって、結局何も言えなかった。 どっちが過剰反応だか。 全然COOLじゃねーなと内心で呟き、ガシガシと軽く髪を掻き毟った。 「…俺らも帰るか」 マカと連れ立って教室を出る。 廊下には既にキッドの姿は無く、トンプソン姉妹の慌てた靴音だけが遠くに聞こえた。 (顔、赤かったな) 逃げるように教室を出て行ったキッドは明らかに赤面していて。 あの程度であそこまで動揺するのなら、本当にキスする時はどんな顔をするんだろうか、なんて。 (そんな事、俺が気にする必要全くないんだけど) また余計な事を思い出しそうになって、両手をポケットに乱暴に突っ込む。 右手の指先だけがやけに熱いなんて、絶対に気のせいだと思いながら。 |