STAIRS


01

「『その視線からは決して逃げおおせることのできない千里眼』……だっけ。そのまんま過ぎてちょっと、面白みはなかったよねェ。梓にゃんらしいと言えば、らしいけど」
「マリーが確か『夜な夜なトイレをクラッシュさせる眼帯の破壊魔』です」
「『人の魂を鏡の中へ引きずり込む着ぐるみ男』がテスカくんのことだったかなー。……で、スピリットくんのがなんだっけ」
「えー、可愛い女の子とみると寄ってきてエッチな服を着…………ってちょっと死神様。コレいいかげん何とかなんないスかね! あきらか俺のだけ、怪異じゃなくてただの変質者っしょ?!」
「怖いことには変わりないじゃない♪」
「勘弁してくださいよマジで」



 デスルーム。
 死神様とデスサイズの二人を前にして、最初こそ緊張した面持ちで対峙していたソウルの表情が、疑問に満ちたものへと塗り替えられていくのにそう時間はかからなかった。
 死武専生ソウル=イーターとしてではなく、デスサイズスとしての招集だ。どんな重要な任務が与えられるのか、と思いきや、告げられた内容はにわかには信じ難いものだった。加えて、目の前で交わされる非常にくだらない遣り取りに、もはや呆れた様子を隠そうともせず、ソウルは両手を腰に当て、疲れた溜息を零した。
「勘弁してほしいのはこっちだってーの……」
「ああン? なんか言ったか新入り」
「なんでもねーよ」
「ま〜ま〜スピリットくん、そう突っかかんないの。ほら、ソウルくんも緊張してんだよねェ。なんたってさ、」
 そこまで言って死神様は、両の掌をぱっと広げ、あっ軽い調子で言い放った。


「……『死武専に深ァく関わる重要なお仕事』なんだし!」