ランケット


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「ソウル……起きろ。ここで、このまま眠る気か? 」

 ……

「……風邪をひいても、しらんぞ」

 ……

「ソウル……、」

 ……


 くす、と呆れたような笑い声と、 髪に落ちてきたぬくもり。
 そのまま額に、頬に降った淡い接触が、唇にも降って、離れる。
 それが切ないほどに名残惜しくて、――寂しくて。
 ゆるく回していた腕を引き寄せ、離れていこうとする体温をぎゅうと抱きしめる。

「起きたのか?」
「…………ん、」

 目は閉じたままで、寝言かとも取れるようなその反応の割に、けして離さないというように腕は解けない。キッドは軽く身じろぎした後、細い吐息とともにそこから逃れることを諦めた。

「……明日は、どうしようか」
「……」
「久しぶりに、ゆっくり時間が取れそうだし……どこか、出かけるかな」
「…………」
「ソウル」
「………………い」
「?」

 ――どこへも、いかない。

 掠れた囁きを最後に、眠りの底へ落ち規則的な寝息を立てる恋人に、キッドは再びくすりと笑いを漏らした。
「そうだ、な」
 小さく呟き、回された腕にそっと手を添える。
 その約束はきっと果たされるのだろうと、分かってはいたけれど。
 それでも、いつかのように軽く袖を掴んで、目を閉じた。



「……おやすみ。良い夢を」





[end.]