01 『ほい、ジャスティンくん』 死神様の広い掌がそっと、壊れものでも扱うかのように魂を手渡す。 彼がそれまで狩ってきた「悪人の魂」とは違い、濃い紫の輝きを放つそれを、受け取った金髪の少年は、けれど手の中のものにはまるで関心がないかのよう、無言で死神様を見上げていた。 『本来なら、生徒自身で狩るのが必須なんだがな。お前のこれまでの功績と、実力とを十分に加味したうえでの特例だ。ジャスティン』 デスサイズであるスピリット・アルバーンが死神様に変わり、少年に告げる。 『お前をデスサイズスの一員として迎え入れる。さあ、』 その、魔女の魂を。 促され初めて、死神様から直々に賜ったそれに視線を落とした、少年の瞳はどこか虚ろであった。 それはまるで、興味の無い玩具を見る子供の目、そのもので、 『オオーー、我が神、我が主よ。あなたが選び給うた人々、あなたの信託を運ぶ人々、あなたを愛するすべての者らに定め給うたものを私に定め、選ばれし者らに書き下し給うたものを私に書き下し給え。私はあなたの僕であり、あなたの僕の子であります』 けれど、顔をあげ、死神様を振り仰いだ彼は、いつもそうするよう流暢に、一介の聖職者として賛美の言葉を捧げ奉る。 『あなたの御名を我がランプとなし、あなたのお望みを我が願望となし、あなたのお喜びを我が歓喜となし給え』 常となんら変わらぬ柔和な笑顔。 『私は、主と共に在ります』 そう誓う少年、ジャスティン=ロウを、主以外の全てを拒絶するようなその蒼い瞳を。 梓はその時初めて、酷く恐ろしいもののように、感じた。 |