特殊競走

特殊ハンデキヤツプ競走

 一般に特ハン又は大ハンデと略称されてゐるレースで、各競馬倶楽部に於いて競走馬種
別によつて行はれてゐるものである。

 このレースは特別条件によつて、登録したる馬の為に、競馬倶楽部のハンデ作成係りが
各馬の過去の成績、タイムを比較して、その馬の背負ふ負担重量を、定量より重くしたり
或は軽くして、各馬の力量を平均するやうに作られた。所謂ハンデキヤツプ競走である。

 各競馬倶楽部に依つて、特別登録料金が定められ、(東京、日本、中山、阪神、京都は
五十円)この登録料総額を附加賞として、一、二、三着馬に、七、二、一又は六、三、一
の割合に授与されるものである。


ハンデ

 各倶楽部に於て、中日以後、後半戦の番組に編成されてゐるもので、このレースに登録
された馬の前半戦の競走成績によつて、作成されたハンデキヤプ競走である。


帝室御賞典競走

 帝室御下賜の銀製菊花御紋章入りのカツプを賞典とする競走である。

 御下賜の光栄に浴してゐる倶楽部は、東京、日本、阪神、札幌、福島、小倉、函館の七
倶楽部で、その中東京、日本、阪神の三倶楽部は毎季、福島、札幌、小倉は春季のみ、函
館は毎年秋季に限り御下賜になつてゐる。

 距離は何れも二千米であつて、出走資格馬は、各国産馬であるから、呼馬でも抽籤馬で
も出走出来るわけである。

 出走登録条件としては、宮内省貸下馬並に既に帝室御賞典を拝受の光栄に浴した馬は、
出走出来ないことになつてゐる。東京、日本の二倶楽部では、事実上の会員所有馬に限ら
れてゐるし、阪神では六歳以下の馬と規定されてゐる。

 負担重量は阪神、小倉は年齢重量であるがその他の倶楽部では全部定量である。勝馬副
賞金は東京、日本、阪神の三倶楽部は二千円、小倉は一千二百円、福島八百円、札幌六百
円、函館五百円である。大正十二年以来昭和十年度までに、この賞典拝受の光栄に浴した
馬は百十四頭の多数に上ってゐる。


農林省賞典競走

 農林省より勝馬に銀製花盛器を賞典として、特に授与する特別レースである。距離は三
千二百米(二哩)であつて、わが国では、東京、阪神の両倶楽部のみで、毎年春秋二季、
施行せられてゐる。出馬条件は前季の新馬にして、各公認競馬の駈歩競走に出走し、賞を
得たる各古馬(呼馬、抽籤馬)であつて負担重量は馬齢である。しかし牝馬の減量が特に
一瓩となつてゐる。

 賞金は両倶楽部共、一着六千円、二着二千五百円、三着一千五百円である。

 この競走の歴史は、東京競馬倶楽部に於いては明治四十四年秋季より「優勝内国産馬連
合競走」の名称の下に、毎年、秋季のみ行はれてきたもので、大正七年からは、春季にも
行ふことになつたものである。又阪神競馬倶楽部にては、大正十三年秋より「各内国競馬
連合競走」の名称にて行はれるやうになつたが、昭和二年春季に「各内国産古馬連合競走」
と改称、昭和三年春季より東京倶楽部に於ても同様の名称に改称され、昭和七年春季より
両倶楽部共に、このレースに農林省より賞典を授与されるやうになり、名称を「農林省賞
典競走」と改めたものである。したがつて、今でも連合二哩と称せられてゐる。

 二哩に勝つ、といふことは競走馬にとつて最高の名誉であり、又二哩に勝つと云ふこと
は、全国騎手達の常に忘れ得ざる希望なのである。


農林省賞典障碍競走

 昭和九年秋季に、「中山大障碍特別競走」として中山競馬倶楽部に初めて施行せられた、
四千百米のわが国障害競走の最大レースである。十年春季に「中山大障碍特別」と改名、
更に秋季に農林省より賞典を下附せられ「農林省賞典障碍競走」と改称されたものである。

 賞として一着に農林省賞典銀製花盛器及賞金一万円、二着三千五百円、三着千五百円を
授与されてゐる。登録料は百円で、その総額を、一、二、三着馬に、七、二、一の割合で
附加賞として授与されるものである。

 出馬登録条件は、各古馬であつて、重量は規定より二瓩を減じ、尚抽籤古馬は特にその
上に二瓩を、アラブ系抽籤馬は五瓩を減じ、牝馬の馬齢重量よりの減量は特に一瓩となつ
てゐる一着本賞金一万円は、東京優駿競走とともにわが国最大の賞金競馬である。


農林省賞典牝馬競走

 牝馬の特別レースとしては昭和三年春季始めて京都競馬倶楽部に創設された「京都牝馬
連合競走」が昨年秋季に農林省賞典が下附せられて、名称を「農林省賞典牝馬競走」と改
称された。

 距離は農林省典競走と同様三千二百米である。登録条件は前季又は前々季の各新馬にし
て、同季の駈歩競走に賞を得たる牝馬に限られてゐる。しかし農林省賞典競走の勝馬は出
走出来ないことになつてゐる。

 賞として一着農林省賞典銀製花盛器に、賞金六千円、二着賞品及賞金二千五百円、三着
賞品及千五百円が贈与せられてゐる。負担重量も農林省典競走と同様馬齢によることにな
つてゐるが、前々季の新馬が出走し得られることが別である。


東京優駿競走

 有名な英国のダービー競走に倣って、昭和七年春季より東京競馬倶楽部に於て、毎年春
季に行はれてゐる、明け四歳馬の特別条件の下に登録された馬の競走で、距離も条件も英
国のダービーに似てゐるので、我々は別称日本ダービーと云つてゐる。

 競走距離は二千四百米(一哩半)賞として一着金盃(価格千数百円)及本賞金として一
万円、二着三千五百円、三着二千円、他に附加賞があるので、一着賞はこれに附加賞を加
はへると、二万余円に上る、わが国最高賞金の大レースである。

 このレースに登録するためには、二歳の秋第一回申込金五十円をそへて申込することに
なつてゐる。三歳の秋に第二回登録料五十円、四歳の春更に第三回登録料百円、合計二百
円で登録を完了するものである。この登録料の総額は一、二、三着馬に、六、二・五、一・
五の割合に附加賞として贈与するものである。

 馬の負担重量は牡馬は五十五瓩、牝馬五十三瓩の馬齢重量である。

 このレースは明け四歳馬の我国競走馬の檜舞台で、種牡馬、種牝馬として将来を約束す
べき重要なもので、この勝馬は馬一代の最高の栄誉であり、又馬主、騎手、生産者の名誉
である。

 古来英国のダービーでは牝馬が勝つことは非常に尠く、わが国に於ても昭和七年創設以
来何れも牡馬が勝つている。


中山四千米競走

 中山に於て毎年春季のみ行はれてゐる、我国駈歩競走に於ける最長距離競走で世界的の
長距離レースとして有名な英国アスコツトのゴールド・カツプ競走に比すべきものである。
東京優駿競走が四歳新馬の登龍門であるとすれば、この中山四千米は競馬界を引退する時
期の近づいた強剛級の真の実力比べの檜舞台である。

 賞として一着銀製花盛器賞金六千円、二着二千五百円、三着一千五百円を授与されてゐ
る。

 重量は馬齢より五瓩を減じ、馬齢による牝馬の減量は一瓩で、加増さるべき重量は規定
(三千円につき一瓩)の二分の一である。但し駈歩に於て三千二百米以上のレースに勝つ
た馬は一回毎に一瓩を加増されることになつてゐる。出場資格は呼馬に限定されてゐる。

 このレースは昭和五年春季内国産馬競走として創設され、ハクシヨウ、ナスノの大レー
ス以来毎年春季に行はれて、七年春に中山四千米と改称されたものである。過去六回の勝
馬は何れも牡馬であつて、現在のレコードは、七年度ハクリユウの四分二十三秒四である。


中山秋季四歳馬特別競走

 わが国最初の四歳馬ステークスとして、昭和四年秋季中山に創設されたもので、毎年秋
季のみに行はれてゐるレースである。距離二千四百米、賞として一着七宝焼花瓶及賞金四
千五百円、二着一千八百円、三着八百円である。登録料の壹百円は、その総額を附加賞と
して一、二、三着馬に授与されるもので、一着賞金は七千円位になる、わが国大賞金競走
の一つである。

 登録条件は明け四歳馬の呼馬に限り、負担重量は牡馬五十六瓩、牝馬五十四瓩の馬齢重
量で、本賞金三千円を得たる馬は一瓩、三千円を超ゆる馬はその超過額一千五百円毎に〇・
五瓩を加増されることになつてゐる。

 例年このレースは狂ひが多く、過去八年間に於て本命馬の勝つたのは、昭和九年フレー
モア一頭だけである。百円以下の配当は昭和八年二番人気のハクコウの勝つた外、四年の
サンシヤイン、五年のパンジー、六年のヤマミチ、八年のレツドサンド等何れも百四十円
以上の穴馬が勝つてゐる。昨年の勝馬ナスタマは単勝二票の大穴馬であつた。


目黒記念競走

 昭和七年春目黒競馬場が府中の現在の競馬場に移転する為に、目黒競馬場時代を記念す
る意味を以て、毎季東京競馬倶楽部に於て行はれてゐる競走である。距離三千四百米、賞
として一着東京府知事賞盃及賞金五千五百円、二着二千三百円、三着一千二百円、この外
に附加賞として、このレースの登録料(一頭に付五十円)の全額を一着六〇%、二着二〇
%、三着一〇%を贈与されてゐる。

 登録条件は、各古馬にして、前季駈歩競走に出走せる馬で、重量はハンデキヤプとなつ
てゐる。

 このレースは大正十四年秋季目黒競馬場に於て「各内国抽籤濠洲馬混合競走」と云う名
称の下に初めて行はれたものであつて、賞金一着三千円、二着一千円、三着五百円で、そ
の当時の人気は俗称二哩一分競走として、大したものであつた。昭和二年春季に「各内国
産古馬競走」と改め、外国産馬の出走を禁止したのである。更に昭和七年春目黒より府中
に競馬場が移転するにあたつて、現在の「目黒記念競走」と改称されたものである。


横浜特別競走

 昭和三年春季より創設されたレースで、距離三千二百米(二哩)である。

 出場資格は明け六歳以下の各古馬であつて前季駈歩競走に出走したる馬で、重量はハン
デキヤプである。

 賞として、一着銀製花盛器に賞金六千円、二着二千五百円、三着一千五百円、この外に
登録料(一頭につき五十円)の総額を附加賞として、六、二、一の割合に一、二、三着馬
に授与されてゐる。昭和三年以来このレースに勝つた馬は十六頭であるが、この中抽籤馬
で勝つた馬に、昭和三年春のニツポン及昨年秋のナンコウの二頭がある。


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