04 悩んだ挙句、直球で切り出した。 昨日は勢いで言ってしまったが、改めて口にしてみると、存外恥ずかしいものだと思い知る。 とりあえずは、言えた。 深呼吸のようにゆっくりと息を吐き、動悸を抑えようと試みる。キッドの様子を伺うと、昨日とは違って神妙な顔のまま口をつぐんでいる。しばらく重い空気が流れた後、一応言っておくが、とキッドが口を開いた。 「…今日は4月2日だぞ」 「知ってる」 冗談で言ってるわけじゃねえよ、と真剣な面持ちで言うソウルに、キッドは長いため息をついた。 「昨日から、何なんだ、お前は」 苛々した仕草で前髪を掴む。 白いラインがくしゃりと歪んだ。 「何もかもが、唐突すぎる……!」 (唐突、か) そうかもしれないし、そうでもないような気もする。 キッドの唇に視線を落とし、昨日の事を思い出す。 何で試しにキスしてみないか、なんて言ったのか。 間接キスであれだけ動揺できるなら、実際にしてみようなんて言ったらどうなるだろうか、ちょっとからかってやるか、という気持ちが半分。 じゃあ 残りの半分は、エイプリルフールという予防線を張らなければ、そんな冗談も言えないこの不可解な気持ちは、何なのか。 触れてみれば、分かるかと思った。 あるいは、触れたいという想いこそが、その答えなんだろうか。 そう結論付けるまでに色んなことをグダグダと考えていたら、いつのまにか窓の外が明るくなっていて。 (そんなわけで、俺はいま猛烈に眠い) 張り詰めた気が緩んだせいか、再び睡魔が襲ってきた。ソウルは欠伸をかみ殺しながら、もっと慎重に行動しろだの言葉に責任を持てだのと、くどくど続くキッドの説教を聞き流していた。 「聞いているのか、ソウル」 「…お前さ」 いいかげん眠さが限界に来たところで、ソウルは口を開いた。 「説教するためだけに、授業サボってきたわけ?」 「…そういうわけでは、」 じゃあ何しに来たんだよ、と問われてキッドが黙り込む。俯いた頬が、少し赤い。冗長な説教は単なる時間稼ぎにすぎないのだとソウルは推察した。 自分の気持ちは伝えた。 キッドの気持ちが知りたい。 「……返事、欲しいんだけど」 覚悟決めろ、自分にそう言い聞かせて、キッドを真っ直ぐに見つめた。 |