AFFAIR


05

「…返事、とは」
 真面目な顔で問い返されて、ソウルは一瞬言葉を無くす。
 え、なに。そこからなのかよ。
「えーと…、俺の話、聞いてたか?」
「聞いている」
 好きだとか、そういう話だろうが、と、頬を染め若干目を逸らして言う仕草が、ちょっと可愛いとか思ってしまう。
 いや、そうではなくて、だ。
「お前の方はどうなのかって聞いてるんだけど」
「………」
 逸らした目線を戻そうとしないキッドに、ソウルは心の奥底がひやりと冷たくなるのを感じる。覚悟を決めたつもりでいたが、まだ、足りないらしい。
 沈黙が痛い。10秒かそこらの短い時間が、無限に続くかのように思えたところで、唐突すぎてついていけん、とキッドが呟くように言う。
「そんなに簡単に、答えが出るか、戯け」
 トーンは低めだが、とりあえずは拒絶の言葉でなかったことに安堵し、ソウルは無意識に握り締めていた拳を緩めた。

「お前のことは、友人として大切に思っているし、……」
 好きだとも、思う。
 そう言われて、それが友情の意と分かってはいても、胸の奥が疼く。
「好意は、その、嬉しいと、思っている」
 途切れがちな言葉は、好意的なものではあるのだが。
(…えーっと?)
 つまり、どういう事なんだ。
 OKなのかNGなのか、はっきりしない。
 頭に疑問符を浮かべて言葉の続きを待っていると、それがキッドにも伝わったのか。
「だから、分からないと言っているだろうが…!」
 キッチリカッチリしていなくて気持ちが悪いんだ、と苛立ったように言われる。
 いや、俺に当たられても。
 逆ギレもいいとこだ。

 つまりは、時間が必要だという事らしい。それはまあ、昨日の今日だし、仕方が無いとして、だ。
 自分の立場は、今、彼の中でどう位置づけられているんだろうか。
「『オトモダチから始めましょう』、ってやつか」
 半ば断り文句として定番の台詞を口にするソウルに、キッドが眉を寄せる。
「俺とお前は友人ではないのか」
「や、そういう意味じゃなくて…」
 ソウルは困ったようにガシガシと頭を掻いた。遠まわしな言い方では通じないらしい。
「…友達以上恋人未満?」
「なんだその中途半端なくくりは…これ以上半端な物を増やすな」
「…無茶言うなよ」

 ああもう面倒くせえな、とソウルが焦れた声を上げる。
「じゃ、恋人から?」
「こ、……」
 言葉を詰まらせるキッドに、そのほうがキッチリしてていいだろ、と投げやり気味に言ってやった。