自筆証書遺言について
●法的に有効な書き方
①全文、②作成日付、③作成者氏名、を遺言者が自書。(代筆不可→遺言無効)
氏名末尾に④押印(認印可)
以上の①~④の「4条件」を守れば形式としては有効。
(日本語でなくとも良い)
・様式は自由、複葉も契印は必須でないが、密封封印等一通の遺言書を明確に
・日付は年月日まで特定する必要があるが、何某還暦の日、何年元旦も可
本文になく、密封封印の封筒に日付自書も有効(判例)
・氏名は遺言者との同一性が確認できれば、氏や名のみ、通称・雅号も可
・押印は不可欠だが、認印や拇印でも良い(署名は例外)
※:内容が実現可能かは専門家に相談が良い。
●自筆証書遺言の末尾に書いておくと良い文言(青色の部分)
遺言者は本遺言の全文、日付、氏名を自書して押印した。
平成○年○月○日 遺言者 何 某 ㊞
●遺言の方式に従って前の遺言を取り消す場合(青色の部分)
後の遺言で前の遺言を取り消す場合
遺言者は本遺言より以前に行った遺言の全部を取り消す。
遺言の一部を取り消すことができるが、長い遺言でない限り再度新規作成が
良い
遺言自体を取り消す場合(遺言の撤回)
遺言者は○年×月△日作成の遺言の全部を取り消す。
●変更の仕方は法定(民法968条2項所定の方式)
遺言者が、①変更場所を指示し、②変更した旨を附記し、③特にこれに署名し、
④変更の場所に押印して効力。(変更印は本文印と同一でなくても可)
以上の①~④の「4条件」を守れば形式としては有効。
(これ以外の訂正は無効)
変更の仕方は厳格ゆえ、変更や訂正あれば全文清書し直した方が無難。
変更の仕方の一方式
相続させる
・・遺贈する。→ この行4字抹消、5字加入 ・・遺贈する。
甲野太郎 ㊞
※:変更は専門家に相談が良い。
●変更の方式を誤った場合
変更は無効、判読可能なら原文復活、
遺言者真意と隔たれば遺言事項全部が無効
明らかな誤記の訂正は方式違背あっても遺言の効力に影響なし
変更部分が付随的補足的な意味に過ぎない場合も同様に解せる
●封筒について
封筒に封入、密封、封印は任意。
封入せず、封入だけ、密封まで、密封し封印まで、いずれも任意。
封印の印鑑は遺言書に押した印鑑と同一が良い。
封印のある遺言書は家裁で相続人またはその代理人の立会いで開封を要する。
※:封印のある遺言書を家裁以外で開封すると過料に処せられる。
※:開封された封印遺言書か封印してない遺言書かの紛争回避のため封入封筒
に「この遺言書は封印していない」旨の表書き自書が好ましい
※:複葉にわたる場合は、契印や密封等で一通の遺言書を明確にした方が良い
●名義変更手続き
自筆証書遺言は家裁での「検認」手続きを要する。
検認を経ない自筆証書遺言では法務局で不動産の名義変更ができない。
遺言者の出生から死亡までのと相続人全員の戸籍謄本等一式が必要。
遺言執行者が遺言中に指定ない場合、家裁に選任申立か、相続人全員。
遺言中に指定ある遺言執行者が名義変更を実行する場合で述べると
相続の場合:遺言執行者が申請代理人、権利証不要。
遺贈の場合:受遺者が権利者、遺言執行者が義務者、権利証必要。
文言の原則:相続させる→相続、遺贈する→遺贈
登免税税率:相続に適用する区分には相続人に対する遺贈を含む
第三者に対する遺贈は相続でなくその他(贈与等)
の区分になり、税率が5倍になるので要注意
税法上は遺贈も相続税扱いで贈与税扱いではない。
自筆証書遺言の家庭裁判所での検認手続き
●検認手続の目的
遺言書の形式・状態の検証、偽造変造の予防が目的であり、
遺言書の内容の効力は調査しない。(家審法甲類審判)
●家裁申立て → 裁判所 遺言書の検認
申立人 遺言書の保管者又はこれを発見した相続人
申立書 申立人またはその代理人が署名・捺印(認印)
封印のない又は密封でない遺言書は写しも提出が実務。
提出書類等 被相続人の出生~死亡迄の戸籍謄本等一式、住民票除票
各相続人の戸籍謄抄本、住民票
申立人の認印
所定の収入印紙、通常切手×所定枚数分
申立手続 申立人またはその代理人が管内の家庭裁判所にする。
申立てでは代理人の委任状は不要。
●期日の通知
家庭裁判所は各相続人に検認期日を通知
立会えない相続人は通知書にその旨記入し期日迄に返送する。
●期日に持参するもの
申立人 遺言書、認印、収入印紙所定分を持参。
他の相続人 本人の場合は立会いに何も用意不要。
封印のある遺言書は相続人またはその代理人の立会いで開封。
●検認を終えたら
検認を終えた遺言書は、申立てにより、その証明がなされる。
被相続人の預金などを解約するのに銀行等に対しては遺言書は
検認を済ませたのものでないとスムースにゆかない。
不動産の名義変更は家裁検認遺言書の添付を要する。
●自筆遺言番外
・偽変造・滅失・未発見防止対策:同文数通作成、信頼できる者に保管依頼等
・遺言書の保管者が受遺者である特定遺贈のみの遺言は封印せずも危険少ない
・封印あった旨を相続人が告げない場合は、無断開封事実を知るすべがない
事実上(人知れず開封された遺言書は)開封を要しない封印のない遺言書と
同じ
・遺言書の改ざんや破棄を防止するには公正証書化が良いのは言うまでもない
・自筆遺言による相続の場合、大切な事は検認を済ます事である
(開封は副次的)
・遺言書の解釈:遺言書の記載から遺言者の真意に合致した遺言者の意思の
推断
・遺言がある場合の協議の有効性 → 遺言執行者
・家裁の検認手続きが順番待ちで時間がかかる場合、遺言どおりで合意あれば、
遺産分割協議書の方が速い(封印のない遺言で遺言執行者の追認ある場合)
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