遺言執行者の仕事
1.遺言書の発見者または保管者
遺言書の検認等 → 裁判所 遺言書の検認
公正証書遺言の場合は以下の検認等の手続きは一切不要
自筆証書遺言 :家裁検認手続き(+封印ある遺言書の開封手続き)
秘密証書遺言 :家裁検認・開封手続き
死亡危急時遺言:家裁確認手続き
遺言執行者の就職
遺言で指定された遺言執行者の欠格事由不存在確認
遺言で指定を委託された第三者から遺言執行者の遅滞なき指定と相続人
への通知(委託された第三者が委託を辞す場合は遅滞なく相続人に通知)
遺言執行者からの就職承諾(諾否の速やかな通知義務はない)
相当の期間を定めて就職を承諾するか確答すべき旨を遺言執行者に
催告しても相続人に確答ない場合は就職を承諾したものとみなす
遺言執行者の選任
(遺言執行者の指定等がなければ、遺言内容の実現は相続人がするが、
認知・廃除等は遺言執行者が必要で、いなければ家裁に選任申立)
→ 遺言執行者選任の申立書
権利証や証券等をもっている相続人が引き渡さず、遺言内容が実行
できない場合にも、遺言執行者の選任を家裁に申立てることがある
(相続:権利証不要、遺贈:権利証必要)
相続人・受遺者への通知
遺言執行者は、遺言書の存在及び遺言執行者に就職したことを通知
(法に明記はないが、民法1012条から判断してのトラブル防止処置)
2.遺言執行の費用
検認手続費用、財産目録調製費用、相続財産管理費用、遺言執行者の報酬、
執行に要した裁判費用等 … 相続財産中より遺言執行者に支出
ただし遺留分を侵せないので不足分は受益者負担
3.遺言執行者が任務を行うにあたり留意すべき事項
①遺言執行者の権利義務、相続人の処分権制限 → 遺言執行者
②遺言の執行は有効な遺言の存在を前提とするので、遺言の有効性を検討し
遺言の効力を否定すべきと判断した場合は執行を中止する
③財産目録は遺言が特定物の遺贈のときはその特定物の目録調製だけで良く
認知や廃除等、相続財産に関係ないときは調製を要しない
④遺言で相続分又は遺産分割方法の「指定の委託」がある場合、委託を受けた
第三者(相続人以外)が指定を拒絶し、又は相当の期間を定めて指定を催告
しても期間内に確答なく指定を拒絶したとみなす場合、指定を委託した遺言
の効力は失効(相続分:法定相続分、遺産分割方法:相続人の協議や審判)
4.遺産の収集・管理・処分
相続人の確定
相続人、代襲相続人、包括受遺者、相続分譲受人
相続財産の確定
財産目録の調製 相続人は立会を求めたり
公証人による調製を請求できる
相続人全員に財産目録の交付
その他右事項あれば、 不法占有者からの占有移転請求
賃貸物件の未納賃料取立て
執行を要せず当然に実現される遺言事項(相続開始で効力発生)
→遺言者の死亡により特定の相続人に確定的に帰属し、遺言執行の余地はない(最判H3.04.19)
未成年の子の後見人等の指定があれば、
後見開始の戸籍届出
後見監督人の戸籍届出
右指定があれば、その旨告知
特別受益者の持戻免除の指定
遺産分割の一時的禁止
共同相続人間の担保責任の指定
遺贈につき遺留分減殺方法の指定
祖先の祭祀を主催すべき者の指定
相続分の指定があれば、 全員又は特定の者が指定相続分で取得
(遺留分に反した遺言は無効ではない)
指定相続分を除いた残りは他の相続人が
法定相続分によって取得
分割の指定があれば、 指定分割による遺産分割
特定物の名義変更(権利証は不要)
(分割の指定=「相続させる」文言)
執行を要する遺言事項(公正を期すために遺言執行者が不可欠)
遺言認知あれば、 戸籍届出
相続人廃除・廃除の取消あれば、
家裁に申立と審判後に戸籍届出
執行を担当する遺言事項(遺言執行者がいる時は専らその者が担当)
遺贈があれば、 受遺者欠格事由不存在確認
受遺者に遺贈の承認または放棄の催告
特定物の名義変更(権利証等引渡)
財団法人設立の寄付行為あれば、
財団法人設立手続
信託の設定があれば、 受託者となるべき者に信託の引受けの催告
受益者になるべき者にその旨の通知
保険金受取人の変更があれば、
契約者でない被保険者の同意取付
保険者への通知
※死亡保険金が相続財産かどうか → 相続財産
その他相続関連事務 → 相続手続リンク集
5.遺言執行の完了報告
執行終了の通知は相続人への対抗要件(委任終了の対抗要件の準用)
報酬を与えるのであれば、 遺言の定め、なくても家裁が定めれば
6.執行終了後の善処義務
急迫事情ある場合 相続人自ら事務処理可能となるまで善処義務
遺言執行者 ← 相続人や受遺者でもなれるが第三者が適格な遺言事項が多い
1.遺言執行者の資格・解任・辞任
欠格:無能力者、破産者
解任:家裁に請求(任務懈怠、正当事由)
辞任:家裁の許可(正当事由)
2.遺言執行者の権利義務
代理:相続人の代理人とみなし管理権・執行に必要な範囲の処分権を有する
死亡した者の代理は法律上無理があるのでこうしているが実質は被相
続人の意思の実現を任務とし権限もその行為の効果も法定されたもの
復任:やむを得ない事由、遺言で禁止していないこと、選任監督責任を負う
範囲:特定財産遺言はその財産にのみ適用
3.相続人の処分権制限
相続人は相続財産の処分や遺言執行を妨げる行為はできない
違反行為は無効(執行者の定めありを知らなくとも、就職承諾前でも)
4.遺言がある場合の協議の有効性
遺言書の存在の知・不知、遺言執行者の指定のあり・なし、いずれの場合も、
著しく遺言の指定に反しない限り、共同相続人の合意でした遺産分割は
(遺言執行者がいる時は遺言執行者の追認で)有効
遺産分割方法の指定あっても著しく反しない範囲で異なる分割の合意可
遺贈等があれば遺言執行者の有無に関せず遺言に反する部分は合意無効
遺贈等があっても残遺産の分割協議は必要! → 具体的相続分
相続人の1人に全部の遺言で遺言執行者がその相続人である場合
遺留分侵害部分を配慮し直して為した相続人全員の遺産分割協議は有効
5.共同遺言執行者
任務の執行は過半数で決するが遺言に別段の定めあればそれによる
ただし保存行為は各自が単独でできる
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