婚姻を媒介として配偶者の一方と他方の血族とは姻族である
姻族とは、
配偶者の一方と他方配偶者の血族との関係を言う
つまり、「配偶者の一方 ⇔ 他方配偶者の血族」の関係
自分は、「配偶者の一方」か、「他方配偶者」であるから
分解すれば、「自分」の「配偶者の血族」(左辺→右辺)
「自分の血族」の「配偶者」(右辺→左辺)
よって、姻族=自分の配偶者の血族+自分の血族の配偶者
簡単判別法
「姻族は、最初又は最後に1個だけ配偶関係ある場合のみ該当」
最初:「配偶者の~」、最後:「~の配偶者」
自分以外中間はないので、
●の配偶者の●(注1)
はなく
両端もないので、
配偶者の●の配偶者(注2)
もない
注1:兄弟や子の配偶者の、親兄弟や連れ子は自分の親族でない
(理由)自分や配偶者の共同の祖先やその子孫でないから
姻族としては、あくまで血族の配偶者どまり
注2:配偶者の兄弟姉妹の配偶者は、自分の親族でない
(理由)姻族の配偶者まで及ばない(昔の習俗では及ぶ)
↓
有斐閣法律学全集親族法我妻榮著115頁民法改正要綱
(大正要綱)
人事法案(習俗と合致させた?、五・六:注2,七:注1)
第一条 左二掲ゲル者ハ之ヲ親族トス
一 直系血族及六親等内ノ傍系血族
二 配偶者
三 直系血族ノ配偶者
四 三親等内ノ傍系血族ノ配偶者
五 配偶者ノ直系血族及其ノ配偶者 … 前述注2
六 配偶者ノ三親等内ノ傍系血族及其ノ配偶者 … 前述注2
七 子ノ配偶者ノ父母 … 前述注1
八 養子の父母及子ノ養父母
前項第三号乃至第八号ニ掲ゲル親族ハ之ヲ姻族トス
見解1
「自分の配偶者の血族」と「自分の血族の配偶者」が姻族にあたる
「自分の配偶者の子(自分の配偶者の前婚の子等)は自分の姻族」
祖先の再婚相手の子は祖先の配偶者の、ですから自分の姻族でない
子の配偶者の子は「自分の血族の配偶者の血族」となり姻族でない
見解1では「親族 - Wikipedia」:3親等内の姻族例の一部は誤り
見解1が自分基準である限り、見解2に包含されない差があります
見解2
※姻族=配偶者の血族(連れ子を含む)+血族の配偶者とその子孫
+直系尊属の再婚相手とその血族と主張する見解もあります
この見解によれば、子の配偶者の前婚の子は自分の姻族となります
見解1との相異は、血族の配偶者に「とその子孫」を含める点と、
親族とは自分基準であるはずですが「自分の配偶者の血族」から
「自分の」を削除した感のする直系尊属の再婚相手「とその血族」
を含める点です(見解2には「配偶者の血族」に親等基準が拡大)
見解2では「親族 - Wikipedia」:3親等内の姻族例は全て正しい
相違点
どちらの見解も、結婚を契機とするのは同じであるが、大差は下記
見解1:まずは姻族の定義があり、その中で3親等内の姻族が親族
見解2:血族の配偶者の子孫 … ~配偶者にととまらず
直系尊属の再婚相手の血族 … ~再婚相手にととまらず
何らかの制限付きは推測しますが、3親等内は原則含む感
3親等内の姻族の具体化(〇:姻族である、×:姻族でない)
図 | 関係 | 見解1 | 見解2 |
① | 継(曽祖父母・祖父母・父母) | 〇 | 〇 |
② | 配偶者の(曽祖父母・祖父母・父母) | 〇 | 〇 |
③ | 配偶者の前婚の(子・孫・曽孫) … 継子等 | 〇 | 〇 |
④ | (子・孫・曽孫)の配偶者 | 〇 | 〇 |
⑤ | (伯叔父母・兄弟姉妹・甥姪)の配偶者 | 〇 | 〇 |
⑥ | 配偶者の(伯叔父母・兄弟姉妹・甥姪) | 〇 | 〇 |
相 違 点 | 継祖父母の(父母・子) | × | 〇 |
継父母の(祖父母・父母・兄弟・子・孫) | × | 〇 |
兄弟姉妹の配偶者の前婚の(子) | × | 〇 |
子の配偶者の前婚の(子・孫) | × | 〇 |
孫の配偶者の前婚の(子) | × | 〇 |
| (兄弟姉妹・子・孫)の配偶者の(父母) | × | × |
子の配偶者の(兄弟姉妹) | × | × |
配偶者の継(曽祖父母・祖父母・父母) | × | × |
配偶者の(伯叔父母・兄弟姉妹・甥姪)の配偶者 | × | × |
現行民法には姻族の定義はないが、以下は戸籍実務六法を参照
中華民国民法969条(姻族の定義)
血族の配偶者、配偶者の血族、配偶者の血族の配偶者
大韓民国民法769条(姻戚の系源)
血族の配偶者、配偶者の血族、配偶者の血族の配偶者
※注(1999.1.13法4199改正)
「血族の配偶者、血族の配偶者の血族」を … 見解2と同
「血族の配偶者」に改める … 見解1と同
旧民法人事編第三章(親屬及ヒ姻屬)第二十四條
姻屬トハ婚姻ニ因リテ夫婦ノ一方ト其配偶者ノ親族トノ間ニ
生スル關係ヲ謂ウ(以下省略)
以上からすると見解2は改正前の大韓民国民法769条に近い
言葉の範囲から
見解2は誤りで、
見解1が正しいと判断できる
が、更に後述の大審院判決大正4.5.24により確固と断定できる
国の見解例 →
子のある者と再婚した場合のその子|国税庁
三省堂判例コンメンタール民法Ⅳ親族(増補版)
「継子」と「継母の血族」との間には姻族関係はない
(大判大4.5.24刑録21-657)
「泉尾政太郎ハ被告万太郎ノ姉ノ夫ノ子ニシテ被告万太郎ノ姉ハ
政太郎ノ継母ナレハ被告万太郎ノ姉ト政太郎トノ間ニ於テハ
親子間ニ於ケルト同一ノ親族関係アリト雖モ継子ト継母ノ血族
トノ間ニハ法律上血族間ニ於ケルト同一ノ親族関係ナキヲ以テ
被告万太郎ト政太郎トノ間ニ親族関係アリト云フヲ得サルハ勿論
姻族トハ婚姻ニ依リ夫婦ノ一方ト其配偶者ノ血族トノ間二生スル
関係ヲ云フモノナレハ政太郎ノ父ハ其配偶者タル被告万太郎ノ姉
ヲ通シテ被告万太郎ト姻族関係アルモノナレトモ政太郎ト被告
万太郎トノ間二於テハ姻族関係アルヘキ筈ナシ故二予審判事カ
本件二付政太郎ヲ証人トシテ宣誓セシメ訊問シタルハ違法二アラス」
これからすると「親族 - Wikipedia」:3親等内の姻族例中の、
継父母の兄弟姉妹は継子の姻族とする主張は誤りと断じています
(万太郎:継母の弟 ⇔ 政太郎:万太郎の姉の継子)姻族でない
夫 妻┌─┴─┐
┌─┐ ┏━┓ ┌┴┐ ┌┴┐
|母| ┃父┠─┤姉| |弟|被告
└┬┘ ┗┯┛ └─┘ └─┘
└─┬─┘ 継母 万太郎
┏┷┓ / ↑
証人┃子┃継子 父の姻族であるが
┗━┛ 政太郎の姻族でない!
政太郎
結論:継子と継母とは互いに姻族である
継子と継母の血族とは姻族でない
姻族としては血族の配偶者どまり
3親等を盾に姻族の拡大解釈不可
|
上記判例からも、姻族の定義は見解1が正しいと判断できます
例:子の配偶者の前婚の子は「血族の配偶者」を超えています
親戚 = 血縁 + 姻戚
親族 = 血族 + 姻族
範囲の大小:親戚(=親類)>親族
親戚:遠い血縁や広義の義理を含む → 広義の義理
親戚:relative,relation 親戚関係:relationship
親族:kin,kinsfolk 親族関係:kinship
血縁:社会的認知ある生物学的事実/縁組による親戚
姻戚:婚姻によって生じた(血のつながりのない)親戚
父方の親戚:paternal relative
母方の親戚:maternal relative
姻族関係の終了 →
姻族関係の終了(効果・手続)
姻族関係終了届の提出後は、後日気が変わっても撤回できない
自分(夫)の死後、妻に自分の父母と縁を切られたくなければ、
夫婦が家族の単位を自覚して妻の気持ちを聞く
親には従来の古い家制度的考え方を改めさせる
義父母は嫁の寄与(介護)に報いる対価的約束
配偶者亡き後の生存配偶者と亡き配偶者の直系尊属
夫死亡後妻が姑に対してなした毒殺未遂は尊属殺人にあたらない
… 以下、最大判昭32.2.20差戻判決理由中の裁判官の意見 …
刑法上の配偶者の直系尊属とは、現に生存する配偶者の直系尊属
民法上の「姻族関係終了届」が生存配偶者からの一方的意思でい
つでもなされ得るのに届出がないからと言って生存配偶者と直系
姻族間に刑法上の配偶者の直系尊属関係が残っている訳ではない
民法上の姻族関係の効果とて、終了後も続く近親婚制限規定以外
僅かに祭祀承継、家裁審判による3親等以内の親族間の扶養のみ
それらも「姻族関係終了届」があると前提の消滅により当然消滅
… 死亡配偶者の父母(義父母)に対する、
扶養義務の免脱 …