はじめに → 旧民法による相続
【遺産相続総説】 → 相続法の構成
●相続の要件
相続開始前 相続欠格・相続人廃除 → 相続開始前
相続の開始 死亡・失踪宣告 → 相続の開始
相続人の範囲と相続の順位 → 相続人等
相続財産の調査、財産目録調製 → 相続財産等
承認・放棄 相続の承認・限定承認・放棄 → 相続の承認・放棄
債権者の財産分離請求
●相続の効力
相続分 具体的相続分 → 相続分
分割前の共同相続財産の管理 → 遺産の共有
遺産分割 分割協議、名義変更、相続税 → 遺産分割
相続証明書(戸籍,協議書,遺言) → 相続証明書等
相続関連 死因贈与、相続人不存在 → 相続関連
裁判、時効等
【遺言による相続】 → 遺言全般(相続人に関係ある事 → 遺贈、遺留分)
民法の特例 遺留分に関する民法の特例→ 中小企業経営承継円滑化法
遺留分の算定に係る合意の許可 → 裁判所
【養子制度の理念】
成年養子の乱用 相続税対策、縁組意思のない偽装・仮装縁組
親子関係の強化 配偶者の連れ子、婚外子(非嫡出子)
福祉制度の要請 家庭的に恵まれない子の保護養育を目的とした養子縁組
子の利益のための養子縁組 … 他児養育に法的安定性
を与える
【改正民法関係】(2018.07.06成立,07.13公布,順次施行予定)
①相続と登記(民法899条の2)
遺言による指定相続分(法定相続分超過部分)、遺産分割方法の指定の登記
②長期間婚姻の夫婦間相続(民法903条)
結婚してから20年以上の夫婦の場合、配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた
住居は原則的に遺産分割の対象にしない
③遺産分割前に相続財産が処分された場合でも、相続人全員の同意で処分され
た財産も含めた遺産分割をすることができるとする規定(民法906条の2)
遺産の一部の分割もできる規定(新民法907条)
④仮払い制度の新設(民法909条の2)
遺産分割協議成立前でも、葬儀代や生活費を被相続人の預貯金口座から引き
出せる
相続人単独引出可能額:預貯金債権
(法務省令で額を規定)×1/3×法定相続分
⑤遺言執行者の地位と権限の明記(民法1012条、1015条)
相続人の遺言執行妨害行為の善意第三者保護(民法1013条)
⑥配偶者居住権(民法1028条~1031条)
自宅居住権相続を創設し自宅所有権相続と分離、配偶者の居住権を確保
配偶者居住権の評価額は住む年数などに応じて変わる(相続税評価対象)
また、権利を行使するためには登記しなければならない(譲渡不可)
配偶者が遺産分割の対象の建物に住んでいる場合、遺産分割が終了するまで
は無償で住めるようにする「配偶者短期居住権」も新設(民法1037条)
⑦遺留分権利者が遺留分侵害を受けた場合にする請求が金銭支払となる
(民法1046条)
⑧相続人への生前贈与(特別受益)のうち遺留分額の算定の対象となるものを
死亡前10年間にされたものに限定する(民法1046条)
⑨相続人以外の親族の特別寄与(民法1050条)
相続人でない親族が被相続人の介護等をした場合、相続人に対して金銭を請
求できる権利
(相続人でない親族:6親等以内の血族、3親等以内の血族の配偶者)
⑩法務局における遺言書の保管等に関する法律
自筆証書遺言を法務局に保管できる(保管場所がわからなくなるのを防ぐ)
預ける際に署名や押印等最低限の書式の確認を行う
(不備による遺言の無効を防ぐ)
自筆証書遺言を法務局に預けた場合は、家裁「検認」の手続を不要にする
財産目録は、パソコン等で作成して添付することが可能になった
(民法968条の2)
【改正民法関係】(施行期日)要点
(1) 自筆証書遺言の方式を緩和する方策
2019年1月13日
(2) 原則的な施行期日
2019年7月 1日
(3) 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の新設等
2020年4月 1日
相続開始前
推定相続人(将来相続人になり得る者←単なる期待権)
推定相続人調査(遺言公正証書作成等の際に必要)
相続欠格者(欠格事由は法定、宥恕不可)
原因:被相続人・先順位又は
同順位相続人に対する生命侵害に関する事由
被相続人の遺言妨害に関する事由
手続:不要
欠格原因事実の発生時期は被相続人の相続開始の前後を問わない
相続人資格・代襲相続権・受遺能力の全てを失う
相続欠格は代襲原因であるので欠格者に子があれば子が代襲相続
代襲者たる子自身が被相続人に廃除された者や欠格者でないこと
親に対する欠格者でも自分の子を相続できる(当事者間の例外:下記)
親に対する欠格者はその親を代襲して祖父母を相続できない ⇔ 廃除
遺留分を有する推定相続人の廃除(被相続人の意思、兄弟姉妹は含まない)
事由:被相続人に対する虐待・重大な侮辱、著しい非行
手続:家裁に廃除の請求と家裁の審判・調停
生前廃除(被相続人の申立)
遺言廃除(遺言執行者の申立)
相続人資格は失うが代襲相続権・受遺能力は失わない
(遺贈を受けることは可)
廃除は代襲原因であるので廃除された者に子があれば子が代襲相続
代襲者たる子自身が被相続人に廃除された者や欠格者でないこと
親に廃除された者でも自分の子を相続できる(当事者間に限る:下記)
親に廃除された者でもその親を代襲して祖父母を相続できる ⇔ 欠格
廃除の取消は可能(生前・遺言とも家裁に請求)
相続の開始
相続の開始 → 相続手続リンク集
死亡
同時死亡の推定の場合は、死亡者相互間では相続は生じない
遺贈は効力を生じないが、代襲相続は生じる
(相続開始以前の死亡として扱う)
失踪宣告 → [失踪宣告]甲類審判申立書(裁判所)
普通失踪は最後の音信後7年間生死不明の場合で、
期間満了の日に死亡みなし
特別失踪は危難遭遇後1年間生死不明の場合で、
危難の去った日に死亡みなし
危難の去った日:航空機事故は同日、船舶遭難は沈没時、
戦争は止んだ日など
失踪宣告の取消あった場合
原則:失踪も相続もなかったことになる
例外:双方善意第三者権利は不変
相続財産 → 相続財産等
相続財産の調査
相続財産であるもの:被相続人の権利義務のうち財産的性格の強いもの
相続財産として評価の対象になる
(遺産分割の資料、相続税の計算)
民法上の相続財産
不動産・預貯金・自動車、証券・株主権・知的財産権・債権
負債(債務)は遺産分割協議の対象にならない
税法上のみなし相続財産
死亡保険金(*1)・死亡退職金(*2)・定期金契約
*1*2:民法上の相続財産になる場合もある → 相続財産等
相続財産でないもの:被相続人の一身専属権、祭祀供用物
香典は遺族又は祭祀主宰者(喪主)への贈与であり、税法上も非課税
相続財産の調査が相続の承認・放棄の考慮期間(3か月)内に終わらな
場合は期間の伸長を家裁に申し立てることができる
(遠方・広範囲等)
特定遺贈の受遺者たる第三者が遺贈を放棄した場合、遺贈物は相続人に
帰属する
財産目録調製(遺言執行者がある場合はその者がする)…一覧表でも良い
相続人 → 相続人等…本位相続人、代襲相続人、包括受遺者、相続分譲受人
本位相続人(被相続人の遺族のうち、配偶者と直近の血族に限定)
相続の順位:相続人となる者の順位、数人いれば同順位
配偶者は他の相続人と同順位で常に相続人(配偶者は別格)
第1順位:子(子は常に相続人)
実子・養子・胎児を含む(死産の場合は除く) → 実親子関係
被相続人の前婚の子も後婚の子も非嫡出子も同順位
直系卑属でない者(例:配偶者の婚姻前の子)は除く
第2順位:直系尊属(父方と母方、子がいない場合に限る)
実親・養親
親等の近い者優先(父母、祖父母、・・・の順)
血族に限るので配偶者の親(姻族)は含まない
第3順位:兄弟姉妹(子も親もいない場合に限る)
(父母の双方が同じ)全血兄弟・
(父母の一方のみが同じ)半血兄弟
被相続人が養子の場合、実方の兄弟姉妹・養方の兄弟姉妹
被相続人が特別養子の場合:実親や実方兄弟姉妹は含めない
代襲相続人(被代襲者は被相続人の子・兄弟姉妹) → 代襲相続人
代襲者の相続の順位:被代襲者の相続の順位による
代襲相続:代襲者は相続開始時存在していること
被代襲者について発生した代襲原因により代襲者が被相続人を
直接に相続する
代襲者自身が被相続人に廃除された者や欠格者でないこと
代襲原因:被相続人の死亡以前の推定相続人の死亡、廃除・欠格
被相続人と同時死亡の推定者は相続開始以前の死亡として扱い、
代襲原因となる
相続の放棄は代襲原因とならない
子の代襲相続人(代襲子・再代襲孫以下も)
子の子つまり被相続人の孫、
孫が亡くなっていれば孫の子つまりひ孫
被相続人の直系卑属でない者は除く
(代襲原因ある養子の縁組前の子等)
兄弟姉妹の代襲相続人(代襲子まで)
兄弟姉妹の子(代襲子)つまり被相続人の甥・姪
亡き相続人に代襲者がなく他に同順位相続人がいない場合は次順位の者
が相続人
包括遺贈の受遺者
(一定の割合を示してする遺贈を受けた相続人又は第三者)
→ 遺贈
相続分譲受人(相続分の譲渡を受けた他の相続人又は第三者)
→ 相続分の譲渡
相続人確定
相続人と包括遺贈の受遺者の、相続の承認・放棄を経て確定する
相続の放棄は代襲相続の原因にはならない
単独相続人又は同順位相続人全員が放棄すれば次順位の者が相続人と
なる
共同相続の当事者であり、共同相続前の遺産分割協議の当事者でもある
相続を承認した相続人全員(代襲相続人や第二次相続人を含む)
包括遺贈を承認した包括受遺者
相続分譲受人
相続人不存在
相続財産法人手続 → 相続関連
相続の承認・放棄
相続の承認 → 相続分
相続の承認(単純承認)は、意思表示でするか又は
(法定事実により承認したものとみなされる)法定単純承認による
意思表示
法定単純承認(以下の①~③のいずれか)
①相続財産の処分(抵当・質入も該当、処分に当たらない場合は非該当)
処分でも非該当の例:高価でないものの形見分け、
軽微な葬式費用の支出
②背信行為(隠匿・私的消費・悪意目録不記載)
例外:Aが放棄後、その放棄により相続人となったBが単純承認
した後、Aが相続財産を隠匿等
… B保護のためAの法定単純承認とみなさない
③考慮期間の徒過
原則:3か月
例外:相続財産の存在の認識時点等を考慮して家裁が伸長を認める
遺産がある場合で負債の存在不明の場合は
限定承認すべき
遺産がない場合で負債の存在不明の場合は
考慮期間の伸長が認められ易い
承認も放棄もしないで考慮期間徒過が普通である実態からと、
債権者の通知が(故意・過失・無過失で)遅れる場合を考慮
考慮期間の起算点
原則:自己のために相続があったことを知った時から3か月以内
被相続人死亡の事実────┐
├─を知った時
自己が相続人になったこと─┘(+相続財産の状況)
例外:先順位相続人全員が相続放棄した場合、
次順位の自己が相続人になったことを知った時から
例外:相続人が承認・放棄せずに考慮期間内に死亡した場合、
その者の相続人に承継され、第二の相続人
(再転相続人:承認・放棄権の承継)が自己のために相続が
あったことを知った時から
例外:相続人が無能力者の場合、
法定代理人が無能力者のために相続があったことを知った時
から
例外:相続人が相続財産は全くないと信じ、かつそのように信じた
ことに相当な理由がある場合の考慮期間は、相続人が相続財
産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認
識しうべかりし時から起算するのが相当(最判昭59.04.27)
(相続財産の状況、特に債務の存在)
被相続人の生活歴、相続人との交際状態、その他諸般の状況
から
当該相続人に相続財産の有無の調査を期待することが著しく
困難な事情がある場合
相続の承認の効果
相続人は被相続人の権利義務を無限に承継する
相続の放棄
考慮期間内に家裁に相続放棄の申述(各自単独でできる)
→ 相続の放棄の申述
相続放棄申述→家裁から照会→申述時認印で回答
→家裁から相続放棄受理通知
相続放棄申述受理証明書(家裁に証明願)の申請
相続放棄しなかった相続人等、利害関係人からも証明書の交付請求可
遺留分と違い、相続開始前は放棄できない
(遺留分を放棄しても相続はできる)
単純承認事由の発生:あれば、放棄の前でも後でも放棄は無効となる
相続開始時に遡って相続人でなくなるので遺産は正負とも一切承継しない
不動産についても何人に対しても登記なくして対抗できる
放棄は代襲原因とならないので子がいても代襲相続は起こらない
単独相続人又は同順位相続人全員が放棄すれば次順位の者が相続人となる
相続資格の重複と放棄
自分の孫(父の子)を養子としている祖父が
子(父)の相続開始後3か月以内に死亡して相続開始した場合、
孫が祖父の養子としてなした相続放棄は代襲相続人としての放棄を含む
祖父─→亡父─→孫A‥‥祖父に対する代襲相続人としての相続放棄
| みなし↑
└─→養子(=孫A)‥祖父に対する養子としての相続放棄は
祖父─→亡父─→孫A‥‥父に対する子としての相続放棄は
| ↓
└─→養子(=孫A)‥祖父に対する養子としての相続放棄とは
みなさず
養子が相続放棄した後は、養親子間で裁判認知が後日確定しても養子は
非嫡出子としての相続権を有しない
同順位の相続人の全員が相続放棄をした時のみ相続権が次順位の相続人に移
るので次順位以降も全員が放棄するには、配偶者及び第1順位から第3
順位まで、各順位の相続人全員が順位毎の順番に相続放棄の手続を行う
必要がある(同時不可、移転後)
負の遺産(借金等)の負担を回避するには放棄か次の限定承認
相続の限定承認
考慮期間内に相続人全員から家裁に申述 → 相続の限定承認の申述
一部の相続人が放棄し、他の全員が限定承認は可能
得た財産の限度で債務や遺贈を弁済
限定承認後、一部の相続人が相続財産を隠匿・私消した場合、
債権者は生じた不足分、その相続人に相続分に応じて弁済を請求する権
利を有する
相続財産と相続人の固有財産は混同によって消滅せず清算終了まで分離
相続人申述の家裁受理で相続財産の清算が行
なわれる … 2か月以上の公告・催告、競売、弁済
債権者には受遺者を含むが包括受遺者は相続人と同一のため含まれない
清算の費用は相続財産から、限度承認者の手続懈怠・違反弁済は賠償責任が
生ずる
弁済後残余あれば限定承認者が承継、なければ弁済を要しない責任なき債務
で残存
承認・放棄の取消等
撤回:不可
取消:当初の方式で取消可能
無能力、詐欺・脅迫、親権者や後見監督人の同意なし
再転相続人の承認・放棄
(再転相続人:相続人が承認・放棄せずに考慮期間内に死亡した場合の第二
の相続人)
第一の相続(被相続人の財産を相続人が相続)と第二の相続(相続人の財産
を再転相続人が相続)の両方について下記の選択肢により、第一・第二
の順で、各自承認・放棄が可能
第一の相続を承認、第二の相続も承認
第一の相続を放棄、第二の相続は承認
第一の相続を放棄、第二の相続も放棄
第一の相続を承認し、第二の相続は放棄はできない
(第一の相続だけ受けるのは不可)
先に第二の相続を放棄した場合は、第一の相続の承認・放棄もできない
(放棄みなし)
受遺者の相続人の承認・放棄
(遺贈の受遺者が期間内に承認・放棄をしないで死亡したとき)
包括遺贈=受遺者の相続人が自己の考慮期間内に承認・放棄をなし得る
特定遺贈=原則:受遺者の相続人は自己の相続分について承認・放棄可能
例外:遺言者が遺言に別段の意思を表示したときはその意思に
従う
財産の分離
意義、制度趣旨
意義:混交前にする相続財産と相続人の固有財産の分離清算
(各債権者の弁済確保)
趣旨:財産分離により債権の全額弁済又は高額配当が受けられる債権者保護
のための制度で、申立による家裁の審判
相続財産は一定期間(財産分離申立~清算手続終了)、相続人の固有財産
とは区別される
相続債権者・受遺者には相続財産から、相続人の債権者は相続人の固有財
産から、弁済を確保させる制度で清算後の残相続財産は相続人に相続
され、残債務は相続人に相続される
財産分離の内容
第1種財産分離:相続債権者・受遺者からの請求
([被]財産良好、[相]債務超過)
相続開始(知不知無関係)から3か月以内又は混交前
第2種財産分離:相続人の債権者からの請求
([被]債務超過、[相]財産良好)
相続人が限定承認をすることができる間又は混交前
利用状況
実際は財産分離も相続財産破産もほとんど利用されておらず、
限定承認が利用されている
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