<遺産分割>


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Update 2014.09.22

遺産分割

 … 相続分に捉われない遺産分割
  (ただし審判分割はあくまでも相続分に従う)
分割の時期
  原則:いつでも分割請求できる
  例外:分割禁止の定めがある場合
    遺言による分割禁止(最長5年間)
      禁止期間内の分割も全員の合意があれば有効
      ただし、遺言に遺言執行者の指定ある場合は遺言に矛盾は不許
    共同相続人の不分割特約(最長5年間、更新1回限定)
      禁止期間内の分割も全員の合意があれば有効
    家裁の分割禁止の審判
      禁止期間内の分割は家裁に分割禁止審判の取消申立が必要
  分割前の放棄
    法定相続後の共有持分の放棄は他の共有者にその持分に応じて帰属する
  分割前の譲渡 → 相続分の譲渡

遺産分割 … 通常は、共同相続人全員の協議による現物分割
  遺産分割の種類と方法
  基準:遺産の種類・性質、各相続人の年齢・職業・心身の状態・生活の状況
  種類:指定分割、協議分割、審判分割(調停・審判)
     指定分割:被相続人が遺言でする遺産分割方法の指定又は指定の委託
          遺言で分割方法の指定があれば最優先
     協議分割:共同相続人間の協議で分割方法を決定する
          遺言がある場合の協議の有効性 → 遺言執行者
     審判分割:協議が整わなければ家裁に調停申立
          前提問題等があれば家裁に審判申立
  方法:現物分割、代償分割、換価分割
     現物分割:誰がどの財産を取得するか決める最も一般的な分割方法
     代償分割:ある相続人が法定相続分以上の財産を取得する代わりに、
          他の相続人に自分の金銭を支払うという方法
          金銭でなく、物を渡す場合は代物分割になる
     換価分割:相続財産を売却してその代金を分割する方法
  対象:可分債権債務は相続分の割合で当然分割、不可分債権債務は分割不可能
  協議の当事者 → 相続人等
  相続人全員の参加(代襲相続人を含む)、包括受遺者・相続分譲受人の参加
    第一次相続をしないまま、第二次相続が開始した場合の第二次相続人等の
    参加
    原則:一部の者を除外してした分割協議は無効
      相続の承認・放棄をすべき相続人中、相続を放棄した者は除く
    例外:相続開始後、分割前に死亡した第二次相続人のいない(亡)相続人は
      除く
      分割後に死後認知により相続人となった非嫡出子が、遺産の分割を請
      求しようとする場合は、価額の支払請求権を有するのみで既に為され
      た分割は有効

  不在者・行方不明の相続人がいる場合(家裁に下記①~③いずれか)
   ①不在者・行方不明の者の不在者財産管理人の選任と権限外行為許可申立
      不在者の戻る可能性有無を考慮した配分の遺産分割協議書が必要
      不在者と利益相反になる場合は、不在者財産管理人の変更が必要
      不在者財産管理人と他の相続人とで遺産分割協議
      行方不明者が被相続人の死亡以前に死亡している時は分割協議は無効
   ②行方不明の者の失踪宣告の申立(普通失踪又は特別失踪)
      死亡したものとみなされ、残りの相続人で遺産分割協議
   ③遺産分割の審判申立(上記が不可能か協議不調/不能の場合)
  相続人に成年被後見人とその者の成年後見人がいる場合で成年後見監督人が
    いない場合は、利益相反にあたるので、特別代理人の選任が必要
    (家裁申立)
  相続人に未成年者と法定代理人がいる場合、利益相反にあたり、特別代理人
    の選任が必要(家裁申立)
    代理人選任:利益相反行為特別代理人(親子間)
    代理人選任:利益相反行為特別代理人(未成年後見人・被後見人間)
  親権者が相続人でなく、数人の未成年者が相続人の場合も特別代理人の選任
    が必要(家裁申立)
    代理人選任:利益相反行為特別代理人(同一親権下の子相互間)
    事例:祖父の相続で亡父の複数未成年子が代襲相続人の場合、
       子の母は相続人でなく1子の法定代理人として協議に参加
       2子以降は特別代理人の選任が必要
  利益相反行為特別代理人は複数代理不許
  胎児がいる場合は出生まで分割を待つ
  上記以外で参加を要する者
    未成年者の親権者・後見人、
    遺言執行者、相続人の(任意)代理人・破産管財人
  遺産分割協議 → 協議者の頭書きの例(数次相続、代襲相続、未成年者)
  遺産分割協議書作成 … 相続人全員で作成するが、相続人が大勢の場合等
    では、迅速に処理する方法として各相続人毎に押印する
    遺産分割協議証明書の形もとれる
  遠隔地等で会同によらず1人が全員に持ち回り承諾取付けや書面承認も有効
  協議の前や後の相続財産の相続人からの持分第三取得者との対抗問題に注意
    相続分の譲渡(協議前)、個々の財産の持分譲渡(協議前・協議後)
    1か月以内の限定付だが一方的に取戻し可能なのは相続分の譲渡のみ
  相続人の担保責任(遺言や相続人間の特約で担保責任を負わないとするも可)
    債権の相続人に対する債務者の無資力担保、無資力者の担保責任の分担
  協議により共同相続人の1人が他の共同相続人に債務を負うことに確定した
    が、その債務を履行しない時→債務不履行による法定解除不可
                  合意解除して改めて協議成立可
  遺産分割協議書の数
  本位相続
    一つの協議書でするが、分割時、現存する遺産が対象
    除かれる遺産例:債権者に対する弁済、
            遺贈や遺言による財団法人設立拠出
  代襲相続
    相続人と代襲相続人で一つの協議書でする(遺産が同じだからである)
  数次相続
    一次被相続人の固有遺産については一次相続人と二次相続人で
      一つの協議書
    一次相続として誰が遺産を相続したかを協議書に書いておいた方が良い
    亡一次相続人については、その二次相続人が亡一次相続人の地位で協議
    二次被相続人の固有遺産については一次被相続人のとは異なり
      別々の協議書

協議不調等の場合 … 審判分割はあくまでも相続分に従う
  協議が整わなければ家裁に遺産分割調停申立
    (協議不調の場合)
  前提問題等があれば家裁に遺産分割審判申立
    (裁判所職権で調停を経る場合あり)
    前提問題の争いや協議不能による審判分割は具体的相続分の割合で現物
      分割が原則
    遺産分割のための前提問題につき家裁の判断を要する事項
      相続人の範囲(相続人資格の存否、行方不明の相続人等)
      分割対象の相続財産の範囲、各人の具体的相続分
      遺言の有無や効力、遺留分減殺請求の有無

所有権の移転
  遺産分割(遺言・協議)による各種名義変更(単有・共有)
    移転の時期と登記の態様
      (⇔分割前の法定相続の申請は相続人全員が原則)
      法定相続前の遺産分割:原因=相続、
              申請:各相続人が単独
      法定相続後の遺産分割:原因=遺産分割、
              申請:権利者・義務者が共同
    相続関係書類の収集(戸籍・遺産) → 相続証明書等
      戸籍:被相続人の戸籍謄本等の全部、
         相続人全員の戸籍謄本等、その他
      遺産:不動産、動産、現預金、有価証券等、知的財産権、債権、債務
         みなし相続財産のうち相続人に相続される分 → 相続財産等
    法務局管轄毎に名義変更有無が異なる場合の相続関係説明図は別々に作成
    登記登録通知(内容証明)等の手続き
      不動産:管轄法務局等、自動車:管轄運輸局等
      預貯金・投資信託:銀行や郵便局
      株券:会社、生命保険契約上の権利:生命保険会社
      債権:債務者、債務:債権者
  家裁へ祭祀財産承継者指定の申立
    (遺言による祖先祭祀主催者の指定もなく慣習も不明なとき)
  遺留分減殺請求による返還 → 遺留分減殺請求
  負担付遺贈遺言の取消(家裁審判)による相続人への移転
    (遺贈分の遺産分割協議)

遺産の表示
  不動産(書下し形式の場合)
    土地(所在・地番・地目・地積)
      何県何市何1丁目何番 宅地 何.何㎡
      上記土地に対する持分としてその何分の何
    建物(所在・家屋番号・種類・構造・床面積)
      何県何市何町何丁目何番地何 家屋番号何番何
      居宅 1階 何.何㎡ 2階 何.何㎡
  預貯金
    株式会社何銀行何支店に対する被相続人名義の
      口座番号何の総合口座における預金債権
      内訳  普通預金残高金何円 貯蓄預金金何円 定期預金金何円
          上記各債権から生ずる利息債権
    何郵便局取扱株式会社ゆうちょ銀行に対する被相続人名義の
      記号何番号何の総合口座における貯金債権
      内訳  通常貯金 残高金何円 定期貯金 証書番号何 金何円
          上記各債権から生ずる利息債権
  自動車
    被相続人所有の次の自動車
      車名・型式・車台番号・登録番号(普)/車両番号(軽)

相続税


申告の要否判断
  (相続税の申告が必要な場合かどうかが関心事) → 相続税|国税庁
  各人の課税価格(=各人の正味の遺産額)
    各人の課税価格=各人の遺産額+各人の3年以内の贈与
    各人の遺産額=相続・遺贈で取得した各人の相続財産(積極財産)
          +受取人のみなし相続財産(死亡退職金・死亡保険金)
          -負担した被相続人の債務(消極財産)や葬式費用
          -各人の非課税額
    相続開始前3年以内の贈与は相続税対象として受贈者の課税価格に含める
  相続・遺贈で取得した財産のうち各人の非課税財産の例
    法定相続人の数は後述の遺産に係る基礎控除額の計算に用いる法定相続人
      の数に同じ
    死亡保険金のうち各人の非課税額の部分
      500万円×法定相続人の数×相続人全員の受取額に対する各人の
      受取額の割合
      ただし被相続人が負担した保険料に対応する部分の保険金額について
      対象とする
    死亡退職金のうち各人の非課税額の部分
      500万円×法定相続人の数×相続人全員の受取額に対する
      各人の受取額の割合
    お墓・仏具等
    公益事業目的供出予定財産、申告迄に特定公益団体に寄付した財産等
  各人の課税価格を合計した課税価格の合計額が
    遺産に係る基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要
      (超える部分が課税遺産総額)
      課税遺産総額=課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額
  遺産に係る基礎控除額の計算
    この計算に用いる相続税法上の法定相続人に含める養子の数は制限されて
      いる
    平成27年1月1日以前の相続・遺贈について適用
      遺産に係る基礎控除額
      =5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
    平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用
      遺産に係る基礎控除額
      =3000万円+(600万円×法定相続人の数)
    この計算に用いる上で、法定相続人の数とは相続の放棄があった場合でも
      その放棄がないとした場合の相続人の数を言う
    この計算に用いる上で、法定相続人に含める養子の数とは
     ・被相続人に実子がある場合:養子の数は1人まで
     ・被相続人に実子がない場合:養子の数は2人まで
    この計算に用いる上で、実子とみなす場合とは
     → No.4170 相続人の中に養子がいるとき|相続税 |国税庁
    ①特別養子縁組により養子となった人
    ②被相続人の配偶者の実子(嫡出子・非嫡出子)で
     被相続人の養子となった人
    ③被相続人の配偶者の婚前からの特別養子で被相続人の養子となった人
    ④被相続人の実子や養子の代襲相続人(複数人の場合はその全員)
  相続税に関する各種の特例
    小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
     → 限度面積以下の事業用宅地や居住用宅地等の減額
       (居住用≦240㎡80%減額)
    特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
     → 特定同族会社非上場株式等、特定森林施業計画対象山林
    農地等の相続税の納税猶予の特例
一言で述べる(!)相続税の計算
 ①課税遺産総額の計算
 ②相続税の総額の計算
 ③各人が納付する相続税額の計算
被相続人の財産を相続・遺贈によって取得した各人の相続財産に実質を
加減した正味の遺産額から、各人の非課税額を除いた各人の課税価格
合計した課税価格の合計額から、遺産に係る基礎控除額を差引いた
課税遺産総額を、法定相続分で按分した額に課税標準に応じた税率を
乗じてこれを合計した相続税の総額を、各人の課税価格の割合で按分
した各人の相続税額から、各人の各種税額控除額を差引いた金額が、
各人の納付すべき相続税額である
※被相続人の配偶者及び代襲含む一親等血族以外の場合、
 相続税の2割加算がある
  配偶者の税額軽減(配偶者の課税価額には申告期限迄に未分割の財産を除く)
         { ( 配偶者の相続税額と1億6千万円 )
            のうち多い方と配偶者の課税価格 }のうち少ない方
  相続税の総額×――――――――――――――――――――――――――
                 課税価額の合計額
 その他の税額控除:贈与税額控除、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除

相続関連


死因贈与
  書面による死因贈与後も、第三者に遺贈可、また後の遺言で取消可
  15才に達した者は単独で遺贈可、死因贈与は未成年者単独不可
    (法定代理人の同意要)
  遺贈と異なり放棄不可、生前に受贈者死亡は失効、遺留分減殺請求の対象
  死因贈与と生前処分(二重譲渡)は対抗問題(不動産は登記で決する等)
  対抗力の高め方:遺留分に配慮、執行者を指定、仮登記、など
  家裁に死因贈与執行者選任申立(死因贈与契約に執行者の定めがない場合)
  死因贈与の贈与者からの生前の取消は取消されても仕方がない事情が必要

相続人不存在
  相続人のあることが明らかでないとき、下記の相続財産法人手続による
    利害関係人又は検察官から家裁に請求、相続財産管理人選任と公告
       ↓2か月
    相続財産管理人から債権者・受遺者に請求申出の公告
       ↓2か月以上
    相続財産管理人又は検察官から家裁に請求、相続人捜索の公告
       ↓6か月以上
    債権者、受遺者に対する弁済
       ↓
    期間内に請求がなければ、相続人・債権者・受遺者失権
    家裁へ特別縁故者に対する相続財産分与の請求:3か月以内
   |
   ├─共有物は他の共有者に帰属
   |
   ├─特別縁故者に相続財産分与
   |
   └─相続財産の国庫帰属
  特別縁故者:相続人ではないが被相続人と深い縁故をもっている者
    被相続人と生計を同じくしていた者(内縁関係、事実上の養親子関係等)
    被相続人の療養看護に努めた者
    その他、被相続人と特別の関係があった者
  法人の特別縁故者:市町村、宗教法人、社会福祉法人、
    法人格なき社団・財団等

調停・審判
  利益相反行為特別代理人(親子間、同一親権下の子相互間)の選任
  不在者財産管理人の遺産分割協議参加は「権限外行為許可」申立
  [相続]、[遺言・遺留分] → 家事調停家事審判
  成年後見制度の利用による相続の承認や遺産の分割

訴訟
  相続回復請求の訴え
    原告:相続権を侵害された真正相続人
    被告:表見相続人、共同相続人、表見相続人からの第三取得者
    悪意・有過失共同相続人は相続回復請求権の消滅時効を援用不可

期間・時効
  相続分取戻権の行使期間    (譲渡の時から1か月)
  相続の承認・放棄の考慮期間  (知ってから3か月)
  知ってから:次のいずれか
・被相続人の死亡と自己が相続人になった─────┐
・承認放棄前に相続人が死亡した場合、      |
 第2の相続人が自己のために相続開始があった──┼→ことを知ったときから
・相続人が無能力者の場合、           |
 法定相続人が無能力者のために相続開始があった─┘
  相続の承認・放棄の取消権の時効
    (追認できる時から6か月・承認放棄から10年)
  遺留分減殺請求権の時効
    (知ってから1年・相続開始から10年)
    知ってから:次の全て
・相続開始があった ─┐
・遺贈・贈与があった─┼─→ことを知ったときから
・遺留分を侵害する ─┘
  相続回復請求権の時効(知ってから5年・相続開始から20年)
    真正相続人が相続権を侵害された事実(相続から除外されていること)
    を知ってから

HP作成者:

中村三郎

,船橋市咲が丘