概要
過量服薬の入院患者が入院中に精神科医師の診察を受ける割合は3割に過ぎないこと,過量服薬による入院医療費は年間77億円費やされていることが,全国規模の後方視的コホート研究で示された。論文は,2012年8月15日付けのGeneral Hospital Psychiatry誌電子版 に掲載された。日本語での解説資料 も用意している。
書誌情報
Okumura Y, Shimizu S, Ishikawa KB, Matsuda S, Fushimi K, Ito H: Characteristics, procedural differences, and costs of inpatients with drug poisoning in acute care hospitals in Japan. General Hospital Psychiatry 34 (6): 681-685, 2012.
目的
急性医薬品中毒 (主に自殺未遂に起因する過量服薬/大量服薬) は,救急医療に大きな負担を与えている。緊急入院の原因となる傷病のうち,過量服薬は上位50位以内に入る傷病である。しかし,過量服薬への診療行為等を検討した大規模な疫学研究は限られており,その多くは,時代遅れになっていた。
方法
過量服薬患者の臨床的特徴と診療行為を検討するために,DPCデータベースに登録された患者を分析した。データベースには,日本全国の急性期病院を退院した患者の,臨床情報と診療行為情報が記録されている。6585人の入院患者について,入院中の精神科医師の診察の有無や医療費などを評価した。
結果
過量服薬の入院患者が,入院中に精神科医師の診察を受ける割合は3割であった。また,過量服薬による入院医療費は,日本全国で年間77億円費やされていると推計された。
結論
治療ガイドラインでは,救急科に搬送された「すべて」の自殺未遂者へ,専門家による心理社会的な評価をすることが推奨されている。しかし,多くの場合,過量服薬の患者は入院中に精神科医師の診療を受けられない状況である。過量服薬への医療資源の適切な配分と予防法略の開発が求められる。
関連論文
Okumura Y, Shimizu S, Ishikawa KB, Matsuda S, Fushimi K, Ito H: Comparison of emergency hospital admissions for drug poisoning and major diseases: a retrospective observational study using a nationwide administrative discharge database. BMJ Open 2(6): e001857, 2012.
詳細: 要約 ; 解説 ; 全文 (無料); IF = NA; 被引用数: 1編
Cited by
Tarui T et al: Independent risk factors for a complicated hospital course in intensive care unit overdose patients. Acute Medicine and Surgery 2 (2): 98-104, 2015.
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