概要
過量服薬の患者は,入院が必要な救急患者の中で,救命救急センターへ過剰に搬送されている可能性が,全国規模の観察研究で示された。論文は,2012年12月5日付けのBMJ Open誌 に掲載された。日本語での解説資料 も用意している。
書誌情報
Okumura Y, Shimizu S, Ishikawa KB, Matsuda S, Fushimi K, Ito H: Comparison of emergency hospital admissions for drug poisoning and major diseases: a retrospective observational study using a nationwide administrative discharge database. BMJ Open 2(6): e001857, 2012.
目的
急性医薬品中毒 (主に自殺未遂に起因する過量服薬/大量服薬) は,救急医療に大きな負担を与えている。過量服薬は集中治療室への入院の15%を占めるが,90%の患者は高度な処置を受けることなく,1-2日で退院していることが知られている。しかし,他の入院が必要な救急患者よりも,過量服薬が救急医療へ与える影響が大きいかは明らかになっていない。
方法
緊急入院患者の臨床的特徴を比較するために,DPCデータベースに登録された患者を分析した。データベースには,日本全国の急性期病院を退院した患者の,臨床情報と診療行為情報が記録されている。116万人の救急患者のうち,上位100種類の傷病について,(1) 高齢者率,(2) 精神疾患の併存率,(3) 重度意識障害率,(4) 救急車での搬送率,(5) 救命救急センターへの搬送率,(6) 手術・処置率,(7) 入院日数の中央値,(8) 院内死亡率を比較した。
結果
緊急入院の原因となる傷病のうち,過量服薬は上位41位を占める傷病であった。過量服薬の救急車での搬送率は2位 (74%),救命救急センターへの搬送率は1位 (38%) であった。一方,入院日数の中央値は2日,手術・処置率は91位 (1.7%),死亡率は74位 (0.3%) と,経過は良好であった。
救命救急センターへの搬送率が2位である,くも膜下出血と比較すると,その経過は大きく異なる。くも膜下出血の入院日数の中央値は28日,手術・処置率は11位 (73%),死亡率は9位 (27%) であった。
結論
過量服薬は,他の入院が必要な救急患者よりも,救急医療へ与える影響が大きいが,経過が良好であることが示された。救命救急センターへ過剰に搬送されている可能性があるため,高度な処置の必要性を,病院前や来院初期の情報から予測するトリアージ・ツールの開発が求められる。
関連論文
Okumura Y, Shimizu S, Ishikawa KB, Matsuda S, Fushimi K, Ito H: Characteristics, procedural differences, and costs of inpatients with drug poisoning in acute care hospitals in Japan. General Hospital Psychiatry 34 (6): 681-685, 2012.
Cited by
Andrews MA: Outcome of patients with cholinergic insecticide poisoning treated with gastric lavage: a prospective observational cohort study. Asia Pacific Journal of Medical Toxicology 3 (4): 146-151, 2014.
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