概要
心疾患や高血圧の外来患者がうつ病や不安障害を併発すると,精神疾患がない人よりも,生活費に占める患者自己負担の割合が2.5倍以上増えることが,全国規模の横断研究で示された。論文は,2013年2月4日付けのGeneral Hospital Psychiatry誌電子版 に掲載された。日本語での解説資料 も用意している。
書誌情報
Okumura Y, Ito H: Out-of-pocket expenditure burdens in patients with cardiovascular conditions and psychological distress: a nationwide cross-sectional study. General Hospital Psychiatry 35(3): 233-8, 2013.
目的
糖尿病や高血圧などの慢性身体疾患と精神疾患の関係は深い。慢性身体疾患がある人は,慢性身体疾患がない人よりも,うつ病や不安障害などの精神疾患を併発するリスクは2倍ほど高い。さらに,精神疾患を併発すると,生活の質が低くなる,服薬アドヒアランスが低下する,死亡率が上昇するなど,様々なネガティブな結果につながることが知られている。しかし,精神疾患を併発すると,生活費に占める医療費の患者自己負担の割合まで増えるかは明らかになっていない。
方法
日本全国の横断調査である2007年の国民生活基礎調査のデータを分析した。20歳-59歳の独居の住民20,763名に着目して,慢性身体疾患の受診状況,精神疾患の有無 (K6スコア),医療費の自己負担額,生活支出の状況を評価した。
結果
肥満症,脳卒中,心筋梗塞,高脂血症,糖尿病で受診している人は,それぞれの身体疾患で受診していない人よりも,精神疾患を併発するリスクは1.6倍以上高かった。また,精神疾患の治療率は50%を切っていた。肥満症,心筋梗塞,高血圧症の外来患者が,精神疾患を併発すると,生活費に占める医療費の自己負担の割合が2.5倍以上増えることが示された。
結論
これらの結果は,(1) 慢性身体疾患の治療に係わる医療者は,精神疾患をスクリーニングして管理する必要があること,(2) 政策決定者は,医療費の負担を下げるための施策を策定することが必要であることを示唆する。
関連論文
Okumura Y, Higuchi T: Cost of depression
among adults in Japan. The Primary Care Companion for CNS Disorders 13(3): e1-e9, 2011.
Cited by
Jaspers L et al: The global impact of non-communicable diseases on households and impoverishment: a systematic review. European Journal of Epidemiology 30 (3): 163-188, 2015.
Islam MM et al: Out-of-pocket expenditure by Australian seniors with chronic disease: the effect of specific diseases and morbidity clusters. BMC Public Health 14:1008, 2014.
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