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無料統計ソフトRで心理学

R雑記16-18: 反R派・信仰派?〜How to 学習

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16. 反R派・信仰派? (2007/4/23)

Rを利用し始めて,私は5年目になります。SASユーザーだった私が (1年間ぐらいしかハードに使ってませんが),学部4年の終わりにRと出会い,SASを使えない環境に行くことが明確だったため,Rというフリーソフトウェアを使い始めました。

その後,Rの有用性を認識し始めて,同じような境遇の方 (高いソフトウェアを利用できない方) の一助を担えることを願って,このホームページを作成しました。そして,私の周辺の同僚や後輩,先輩,先生にも,大学院生というのは進路が見えにくい世界で生きているため,Rという便利な道具があるということを伝え続けました。今の私は,色々な環境的な事情もあり,R/STATA/SAS/SPSS/と主要なソフトウェアを一通り利用しており,複数のソフトウェアを利用できることは大事だと認識しています。それでもなお,Rは生涯学習の観点から最初に学習すると良いと思うソフトウェアだと感じています。

しかし,あろうことか,「反R派」と言えるような,潜在クラスが存在するような気がします。研究・教育・学習は,宗教ではないので,「反R派」を批判する必要はありませんが,あまりに,フェアーではない印象を受けている気がしますので,以下に,今までの観察で得られた,この「反R派」を判別する観測変数を列記します。

(a) R学習をやってみたが,何らかの抵抗があり,R学習を諦めた
(b) Rというソフトウェアの存在を伝聞した経験はあるが,Rの詳細を何らかの文章で読んだ経験がない
(c) 既にシェアを占めているソフトウェア以外は,信頼のおける結果を出さないと思い込んでいる

別にRを使えなくても・知らなくても,何の落ち度もないと思いますが,「反R派」の有害な特徴は,知らないものに対して,極度に批判的であるということです。つまり,「私が,使えないものは,他の者も使える必要はない」と言う信念です。そして,「反R派」が発する最も有害な一句は「別にRなんて知らなくても大丈夫だよ」と初学者に伝えてしまうことです。

常識的に考えると,自分が学習を諦めた内容でも,他の方の学習を阻害するような発言をする必要がありません。むしろ,自分が学習を諦めた内容でも,有益な内容であれば,積極的に他の方の学習を促進させることが,重要かと思います。たとえば,英語を読めない研究者が,学生に対して「英語なんて読める必要がないよ」なんて言うことが,いかに非常識か,consensusは得られると思います。このような非常識を,平然と行ってしまうのが,「反R派?」の特徴なのです。

今まで私が出会った,「反R派?」は自己愛が極度に高い方が多い気もするのですが,「自分が知らないことへの学習に対して,他の方の学習を阻害するような行動・発言」は,慎んで頂きたいと切に願います。

次に,「反R派?」の対極に,「過度なR信仰派」もいるような気もします。以下に,今までの観察で得られた,この「過度なR信仰派」を判別する観測変数を列記します。

(a) 初心者の勉強不足だと思える質問に対して,いやに不親切に解答する
(大抵の過度なR信仰派は,PCのハードユーザーなので,初心者の気持ちは絶対に理解できません)
(b) 使用したことのない (使用経験の少ない),他のソフトウェアを過小評価する
(Rは確かに便利ですが,SPSSやSASの利便性も捨てがたい事実は,変わりありません)

別に統計学のユーザーであるならば,Rを使えなくても・知らなくても,それほど落ち度はないはずなのですが,せっかく頑張って勉強しようとしている初学者に対して,尊大な態度で対応してしまうことは,Rユーザーを,ただのオタク集団にしてしまう危険性があるかと思います。CUI中心のソフトウェアは,どうしても,学習上のハードルが高くなってしまうことは,既知の事実なのですから,初学者に対して,広い心を持って頂ければと願います。

Burns, P. (2006, p.6). には,「On the other hand, others find the R-help list quite hostile and think that some commercial support, SAS's for instance, is much preferable. 」という一節があります。
この言葉は,R-help list だけではなく,残念ながらRjpWikiの一部のユーザーや口頭で質疑をする一部のユーザーにも当てはまる言葉です。せっかくの有用な道具も,quite hostile な態度で回答をされたら,初学者の学習意欲がそがれてしまうことは,必然的だと思います。

 

17. Rと論文 (2007/8/4)

R初学者の多くには,関係のない話題になるかもしれませんが,Rを利用していて,論文を書く際に有利になる点を考えてみました。1点だけ思い浮かびました。RとTeXの連携が楽だと言うことです。その結果,図表をデータ解析をして,すぐに,文章に埋め込むことができ,解析をしょっちゅうやり直しても,最新の解析結果で,文章上に図表を表示できるというメリットを享受できます。

心理学の大多数の方は,文書作成時に,MS Wordを利用していますが,TeXとは,Wordの代わりになるような,文書作成ソフトウェアです。TeXを利用すると,Wordと違い,数式を綺麗にかけたり,引用文献を自動的に並べ替えてスタイルを投稿規定に合わせてくれたりします。それにもかかわらず,TeXの利用率が低いのは,単に「プログラムチックで取っつきにくい」というのが原因でしょう。TeXのマニアックな領域は,果てしなく深いですが,単に論文を書くだけであるならば,それほど深い知識を習得せずに (楽な労力で),TeXのメリットを享受できます。

ただし,TeXの「引用文献を自動的に並べ替えてスタイルを投稿規定に合わせる」というメリットを享受するためには,若干の工夫が必要です。日本語で論文を書く場合,多くの心理学系の雑誌は,日本心理学会の投稿要項に従っています。
しかし,この規定は,他の学術領域と比べて,イレギュラーな規定なのか,日本心理学会の規定にあった引用文献のスタイルファイルが存在しません。そこで,jeconを改造して利用する必要が生じます。医学系であると,デフォルトでインストールされているスタイルファイルのjplainを,若干修正するだけで,多くの学術雑誌に対応することができます。英語で論文を書く場合は,多くの学術雑誌は,すでにスタイルファイルが存在しますので,あまり気にしなくて大丈夫です。

話題がTeXにズレましたが,TeXを利用すると,Wordと違い,図表のファイルを文章とは独立に作成することができます。
そして,文章のファイルから,図表を読み出すように設定できるため,図表を変更したければ,図表のファイルだけを書き換えればいいことになります。そこで,図表を徹底して,Rで作成するようにすれば,分析間違え,データの取り直しなどで生じる,解析をやり直した場合の文章作成の負担が,ほとんどなくなります。

「このような負担は,滅多に生じない」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが,私の経験上,このような負担が生じずに,一度解析して,一度図表を書いただけで,何の修正もなしに論文を書いた試しがありません。おそらく,多くの方は,データをよく見るために,同じ図表を何度も書き直して,何度もデータ解析をし直したりしていると思います。

ちなみに,RでTeXの表のファイルを作成するためのパッケージも存在しますが,残念ながら,投稿要項には合わない表ができることが多いです。そこで,投稿要項に合わせるために,自分でゼロからデータフレームをTeXの表の文法に沿ったように書き換えると,このような問題は解決されます。また,図のファイル形式は,「pdf」を利用すると,コンパイルが早くエラーが少なくて良いと思います。

詳しくは,心理学におけるLaTeXの利用 というTeX用ページを準備予定です (2008/1/11)。

18. How to 学習 (2007/8/28)

Rの学習とは,多少離れますが,心理学の学生は (少なくとも私の周辺の大学院生は),統計学を1日あたり30分も勉強していません。

それでは,そのような方が,どのように対処しているかというと,以下のような方が多いです。

(a) 1時間程度で読める,自分の利用する分析手法に関する教科書を1章 (またはWeb) だけを読む
(b) 先輩/同僚に,統計ソフトウェアの使い方を手取り足取り教えてもらう
(c) レポート/卒業論文を記載する際は,先輩/同僚が記載した内容を真似して記載する

ここで,私は,このような対策を取っている方を,批判しているわけではありません。心理学の大学院では,欧米でも統計学や研究法の授業が2-3コマしか課せられていない (Little et al., 2003) ため,致し方ない現状かと思います (私の場合は,学部生時代3コマ,修士課程時代1コマでした)。

私は,このような学習の仕方を,「How to 学習」と呼んでいますが,この学習法は,学習する本人にとっても,その学習者が生産した研究結果を読む方にとっても,害がある行為だと思っております。その理由は,以下の3点です。

(a) 先輩/同僚の持っている知識が正しいとは限らない (むしろ誤りを多分に含むケースの方が多いでしょう)
(b) 分析手法を誤る結果,無意味な結果を報告してしまう
(c) 無意味な結果を読む読者は,時間の無駄でしかない

この「誰にとっても害のあるHow to 学習」を回避するためには,地道な勉強をするしかありません (例: 統計学は独習できないといふけれど…)。しかし,残念ながら,多くの方は,統計学を地道に勉強することを好まないのが,現状のようです。

ここでは,このような方のための3Step対策法を,考えてみたいと思います。
(a) 2-3時間程度で読める,自分の利用する分析手法に関する教科書を1章だけ読む
(b) その分析手法に関する教科書を,統計ソフトウェアで追計算して,ソフトウェアの出力の読み方を認識する
(c) その分析手法の報告の仕方に関する以下の教科書を8割以上読む

この手続きを取ることにより,「害の少ないHow to 学習」に変化すると思っています。地道な勉強が大事であるという私の主張 (統計学は独習できないといふけれど…) は変化しませんが,地道な勉強よりも少ない勉強時間 (1つの分析手法あたり20-30時間程度) で済むことが,この学習法の特徴だと言えます。心理学領域で,意味もわからずソフトウェアをいじるだけの行動特性を持つ方が減ることを切に願っております。

目次: R雑記

Rや統計学に関して,研究者として思うことを書いています。

  1. 海外でのRの普及状況
  2. データマイニング
  3. コンジョイント分析
  4. 欠損値処理
  5. 効果量
  6. 潜在変数を仮定するモデル
  7. Rの教育
  8. メタ分析
  9. 心理学におけるRの普及
  10. 2005年度の普及
  11. Rを薦める・薦めない
  12. 心理学におけるRの普及II
  13. 教科書,マニュアルを読むこと
  14. 2006年度の普及
  15. 統計学 (R) の勉強会
  16. 反R派・信仰派?
  17. Rと論文
  18. How to 学習
  19. 統計ユーザーとしての基準
  20. RとOS/ブラウザ
  21. 2007年度の普及
  22. 初学者が陥りやすい罠
  23. Rを薦める・薦めないII
  24. 心理学におけるRの普及III
  25. キャリアパスと統計学
  26. 医学における検定力,効果量,区間推定
  27. 精神科領域のためのRパッケージ
  28. Rによる論文の審査/印刷期間の管理図
  29. 精神科領域におけるデータ解析環境Rの使用論文
  30. 統計学 (R) の勉強会 (研究会) II
  31. ポスドク問題と統計学
  32. 5年後のあなたへ
  33. データサイエンティスト一考
 

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目次: 無料統計ソフトRで心理学

勉強会

練習

関数の調べ方

雑多な知識

  1. テキストエディタを使用する
  2. 潜在変数を扱うモデルはRでは,今のところ使わないでおこう
  3. Rを学習する意義とデメリット
  4. Rを学習する前に…
  5. 「Rは大変だから勉強しないでおこう」と思う前に…
  6. Rによる関数の作り方
  7. Rによるシミュレーション

R雑記

  1. 海外でのRの普及状況
  2. データマイニング
  3. コンジョイント分析
  4. 欠損値処理
  5. 効果量
  6. 潜在変数を仮定するモデル
  7. Rの教育
  8. メタ分析
  9. 心理学におけるRの普及
  10. 2005年度の普及
  11. Rを薦める・薦めない
  12. 心理学におけるRの普及II
  13. 教科書,マニュアルを読むこと
  14. 2006年度の普及
  15. 統計学 (R) の勉強会
  16. 反R派・信仰派?
  17. Rと論文
  18. How to 学習
  19. 統計ユーザーとしての基準
  20. RとOS/ブラウザ
  21. 2007年度の普及
  22. 初学者が陥りやすい罠
  23. Rを薦める・薦めないII
  24. 心理学におけるRの普及III
  25. キャリアパスと統計学
  26. 医学における検定力,効果量,区間推定
  27. 精神科領域のためのRパッケージ
  28. Rによる論文の審査/印刷期間の管理図
  29. 精神科領域におけるデータ解析環境Rの使用論文
  30. 統計学 (R) の勉強会 (研究会) II
  31. ポスドク問題と統計学
  32. 5年後のあなたへ
  33. データサイエンティスト一考

リンク集

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

著者: 奥村泰之 (Curriculum Vitae)
所属: 一般社団法人 臨床疫学研究推進機構 代表理事
e-mail: yokumura @ blue.zero.jp
Researchmap: http://researchmap.jp/yokumura/
ResearchGate: https://www.researchgate.net/profile/Yasuyuki_Okumura/
Google Scholar: http://scholar.google.com/citations?hl=en&user=c9qyzRkAAAAJ
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