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無料統計ソフトRで心理学

R雑記26-28: 医学における検定力,効果量,区間推定〜Rによる論文の審査/印刷期間の管理図

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

26. 医学における検定力,効果量,区間推定 (2009/6/15, 2010/4/29追記, 2011/7/9追記)

心理学におけるRの普及IIに記載しているように,APAのタスクフォースでは,検定力分析と効果量の信頼区間を報告することを義務付けています (普及はしていません)。これはあくまで心理学 (心理統計学) の現状ですが,医学 (生物統計学) の現状はどうかを調べてみました。

検索対象は,最近 e-らぽ〜るで執筆した「より良い論文執筆とクリティカル・リーディングのためのガイドライン:日常臨床に研究成果を活用するために」という記事で紹介した,1次研究のReporting GuidlineであるCONSORT, STROBE, STARDとしました。


ガイドライン 適用範囲 (と普及状況) 検定力分析 効果量・区間推定
CONSORT 無作為化比較試験 (341雑誌で支持) Item 7: How sample size was determined, and when...

Item 17: For each primary and secondary outcome, a summary of results for each group and the estimated effect size and its precision (e.g., 95% confidence interval)

STROBE 観察研究 (98雑誌で支持) Item 10: Explain how the study size was arrived at.

Item 16a: Give unadjusted estimates and, if applicable, confounder-adjusted estimates and their precision (e.g., 95% confidence interval).

Item 16c: If relevant, consider translating estimates of relative risk into absolute risk for a meaning full time period.

STARD 診断精度の研究 (246雑誌で支持) --- Item 21: Estimates of diagnostic accuracy and measures of statistical uncertainty (e.g., 95% confidence interval)

こうして整理してみると,医学 (生物統計学) においても,検定力,効果量,区間推定を行うことが支持されていることがわかりました。無作為化比較試験の場合は,検定力分析と効果量及びその信頼区間の報告をするように,かなり明確に記載されています。観察研究の場合は,検定力分析と区間推定については明記されています。効果量の記載がないものの,関連する場合は効果量 (相対リスク) を臨床的有意性を判断するための指標に変換することを推奨しているあたりが,
より高度な推奨の仕方になっています。診断精度の研究の場合は,検定力分析の記載がないものの,信頼区間の報告は義務づけられています。感度・特異度自体は効果量の一種であるため,効果量の報告は自明だとしても,検定力の記載がないことが不思議に思います。ただし,診断精度の研究を行う際,参照するガイドラインは,STARDだけではなく,(研究デザインは横断研究かコホート研究であるから) STROBEにも従うことになるため,いずれにせよ,検定力,効果量,区間推定を実施する必要があるでしょう。

これらの分析の「普及状況」「概念的な説明」「報告の重要性」を以下の論文に詳述致しました。
興味のある方は,御参照頂けると幸いです。

また,「検定力の低い研究が非常に多い」ことを以下の論文に詳述致しました。

 

 

27. 精神科領域のためのRパッケージ (2010/2/5)

Rのパッケージを開発しました。私がRを使い始めたときから,じっくりと開発を進めてきたものですので,6年間ほどの研究期間を費やしているという,もっとも息が長い研究になりました。精神医学,精神科看護学,臨床心理学のためのパッケージ (rpsychi) と命名しております。命名からは外れ,ほとんどの行動科学で使用可能ですが。。。

主に,論文に公開されているような情報 (平均値や標準偏差) から検定を行い,効果量と信頼区間を求めるものです。検定力分析やメタ分析をする際に,活用できるよう意図して作っております。なお,随時,関数を追加していく予定です。皆様の研究のお役に立てると幸いです。

社会言語科学会の冬期講習会 (2009/12/19 10:00-17:00 於: 日本大学文理学部) に御参加された方は,本パッケージのベータ版を使用していただきました。今後は,CRANからrpsychiをダウンロードして使用していただくよう,お願い申し上げます。(2010/2/5)

 

 

28. Rによる論文の審査/印刷期間の管理図 (2010/2/21)

「論文の審査/印刷期間は,いったい、どの程度かかっているのだろうか」という単純な疑問を図式化するRプログラムを作っています。使い方は,以下のようにします。

第1に,csvファイルをダウンロードして,適当なフォルダに保存します。

第2に,csvファイルの情報を自分用に変更します。csvファイルには,以下の情報を入力します。

  1. fulltitle...論文の正確な情報 (図には反映されない)
  2. n_reject...リジェクト回数 (初投稿の場合は0と入力)
  3. journal...雑誌名 (簡略表記/28字を超えると改行される)
  4. sub_first...第1回目投稿日
  5. ref_first...第1回目審査結果通知日
  6. sub_second...第2回目投稿日
  7. ref_second...第2回目審査結果通知日
  8. sub_third...第3回目投稿日
  9. ref_third...第3回目審査結果通知日
  10. publish...印刷日

入力する情報は,「著者中心の日付」であり,郵送に要する期間等は,考慮しておりません。純粋に,著者が投稿した日,著者が審査結果を通知された日,著者が印刷を知った日を入力します。ここで,受理日をもうけていない仕様なのは,「修正稿を送ることにより,受理とする」という通知の後,正式な受理日を通知されないケースがあるためです。

第3に,このRプログラムの最初の3行を適切なフォルダ名とファイル名に変更の上,R上で処理します。

第4に,変更したフォルダ上に,PDFファイルが作成されます (下図と同様)。図には,以下の情報が含まれています。

  1. ○は投稿日
  2. 赤線は審査期間 (上に日数表記)
  3. 青線は修正期間 (上に日数表記)
  4. 黄色線は最終投稿日から印刷日までの期間 (上に日数表記)
  5. 太い字は、投稿日から印刷日までの日数
  6. 雑誌名の横の括弧内の数字はリジェクト回数

Rユーザーの大部分は,研究者という職業かと思います。研究者の主要な仕事は「査読付き論文を印刷させること」とよく言われます。Publish or Perish (出版か消滅か) やFile-drawer problem (お蔵入り問題) という非常に耳が痛い格言もあります。このRプログラムを利用すると,自分の研究のおおよその,進ちょく管理をすることができます。決して,上記の問題の直接的な解決策にはなりませんが,おおよその予定が立つと,長期間の戦いにより疲弊した動機づけが下がることを予防できると思います。ある程度プログラムのカスタマイズが必要な場面も多いと思いますが,御活用いただけると幸いです。


目次: R雑記

Rや統計学に関して,研究者として思うことを書いています。

  1. 海外でのRの普及状況
  2. データマイニング
  3. コンジョイント分析
  4. 欠損値処理
  5. 効果量
  6. 潜在変数を仮定するモデル
  7. Rの教育
  8. メタ分析
  9. 心理学におけるRの普及
  10. 2005年度の普及
  11. Rを薦める・薦めない
  12. 心理学におけるRの普及II
  13. 教科書,マニュアルを読むこと
  14. 2006年度の普及
  15. 統計学 (R) の勉強会
  16. 反R派・信仰派?
  17. Rと論文
  18. How to 学習
  19. 統計ユーザーとしての基準
  20. RとOS/ブラウザ
  21. 2007年度の普及
  22. 初学者が陥りやすい罠
  23. Rを薦める・薦めないII
  24. 心理学におけるRの普及III
  25. キャリアパスと統計学
  26. 医学における検定力,効果量,区間推定
  27. 精神科領域のためのRパッケージ
  28. Rによる論文の審査/印刷期間の管理図
  29. 精神科領域におけるデータ解析環境Rの使用論文
  30. 統計学 (R) の勉強会 (研究会) II
  31. ポスドク問題と統計学
  32. 5年後のあなたへ
  33. データサイエンティスト一考
 

What's New

   
 

目次: 無料統計ソフトRで心理学

勉強会

練習

関数の調べ方

雑多な知識

  1. テキストエディタを使用する
  2. 潜在変数を扱うモデルはRでは,今のところ使わないでおこう
  3. Rを学習する意義とデメリット
  4. Rを学習する前に…
  5. 「Rは大変だから勉強しないでおこう」と思う前に…
  6. Rによる関数の作り方
  7. Rによるシミュレーション

R雑記

  1. 海外でのRの普及状況
  2. データマイニング
  3. コンジョイント分析
  4. 欠損値処理
  5. 効果量
  6. 潜在変数を仮定するモデル
  7. Rの教育
  8. メタ分析
  9. 心理学におけるRの普及
  10. 2005年度の普及
  11. Rを薦める・薦めない
  12. 心理学におけるRの普及II
  13. 教科書,マニュアルを読むこと
  14. 2006年度の普及
  15. 統計学 (R) の勉強会
  16. 反R派・信仰派?
  17. Rと論文
  18. How to 学習
  19. 統計ユーザーとしての基準
  20. RとOS/ブラウザ
  21. 2007年度の普及
  22. 初学者が陥りやすい罠
  23. Rを薦める・薦めないII
  24. 心理学におけるRの普及III
  25. キャリアパスと統計学
  26. 医学における検定力,効果量,区間推定
  27. 精神科領域のためのRパッケージ
  28. Rによる論文の審査/印刷期間の管理図
  29. 精神科領域におけるデータ解析環境Rの使用論文
  30. 統計学 (R) の勉強会 (研究会) II
  31. ポスドク問題と統計学
  32. 5年後のあなたへ
  33. データサイエンティスト一考

リンク集

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

著者: 奥村泰之 (Curriculum Vitae)
所属: 一般社団法人 臨床疫学研究推進機構 代表理事
e-mail: yokumura @ blue.zero.jp
Researchmap: http://researchmap.jp/yokumura/
ResearchGate: https://www.researchgate.net/profile/Yasuyuki_Okumura/
Google Scholar: http://scholar.google.com/citations?hl=en&user=c9qyzRkAAAAJ
facebook: http://facebook.com/okumura.yasuyuki
Twitter: http://twitter.com/yachu93