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臨床疫学研究における報告の質向上のための統計学の研究会

設立主旨と主活動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

臨床疫学研究における報告の質向上のための統計学の研究会 (REporting QUality Initiative of Researchers in clinical Epidemiology: REQUIRE) は,2011年5月14日に,論文執筆をする臨床疫学系の研究者への,統計学の継続学習を保つ場を提供し,研究報告の質向上に資する人的基盤を作ることを目的として設立されました。設立時は,市倉加奈子,松岡志帆,奥村泰之の3名の体制で,「心理・医学系研究者のためのデータ解析環境Rによる統計学の研究会」として発足し,2013年10月5日より,より参加者の特性と会目的に合致した,現在の名称に変更しました。
  主催者: 奥村泰之

体制

平成26年度の運営体制は以下の5名です。

  • 奥村泰之...会長
  • 市倉加奈子...会長
  • 松岡志帆...会計
  • 国里愛彦...世話人
  • 清水沙友里...世話人

不正行為による害悪

臨床試験における論文のデータの改ざん・ねつ造などが発覚すると,「不祥事」として大々的にメディアに糾弾されます。これらは科学的には,不正行為 (misconduct) と定義され,論文撤回 (retraction) という厳罰に値するほど,許されるべきことではないと認知されています (COPE, 2009)。こうした不正行為により,真実と異なる再現可能性のない知見が広まってしまうことは,人類にとって害悪でしかないからです。

研究報告の質の悪さによる害悪

一方,研究報告の悪さ (poor reporting) により生み出される害悪の数は,不正行為よりも桁違いに多いことは間違いありません。ここで,研究報告の悪さとは,(1) 研究成果を全く公表しない状態 (non-reporting),(2) 都合の良い結果の得られたアウトカムに焦点化して公表するなど,研究の一部を選択的に公表する状態 (selective reporting),(3) 科学的に重要な情報が,欠落・不完全・曖昧な状態 (incomplete reporting),(4) 無作為化比較試験を行っていなくても,それと誤解しかねる記述をするなど,誤解の生じるプレゼンテーション (misleading presentation),(5) 研究計画書と論文などの情報源により一貫しない研究報告 (inconsistency between sources),に分類されます (Altman, 2013)。こうした研究報告の悪さにより,マスメディアに糾弾されることはありません。しかし,残念ながら,それが生み出している結果は,不正行為が生み出すものと大差がありません。

研究報告の質向上のためのガイドラインの低い普及状況

こうした問題を解決するために,国際的には研究報告の質向上のためのガイドライン (reporting guideline) が開発されています。有名なものでは,CONSORT声明 (無作為化比較試験),STROBE声明 (観察研究),PRISMA声明 (系統的展望),STARD声明 (診断精度研究) などがあります。また,EQUATOR Networkは,こうしたガイドラインの開発や普及啓発に務めています。一部のガイドラインは,日本語訳もされています。しかし,ガイドラインは200種類以上も存在し,その開発と改定は頻繁になされるので,すべてのガイドラインが日本語で利用可能な状態にはなりません。また,日本語で存在していても,大学院の授業や学会の教育講演などで,こうしたガイドラインの教育活動をしている人は希少なので,多くの研究者が理解・実践可能な状態になっていません。

研究報告の質の低い研究が万延

そうした状況を反映してからか,研究報告の質 (reporting quality) の低い研究が万延している状態です。例えば,無作為化比較試験という,膨大な研究資金を要する研究であっても,CONSORT声明が規定する報告すべき内容のうち,(1) 例数設計の根拠を記述している研究は23%,(2) 乱数生成法を記載している研究は39%,(3) 割り付けの隠匿化を記載している研究は17%に過ぎないと指摘されています (Uetani, 2009)。さらに,臨床研究の80%は,科学的に不十分な症例数で研究を推進しているという問題も指摘されています (Okumura & Sakamoto, 2011)。限りある資源を利用して実施した臨床疫学研究も,「資源の無駄づかいに過ぎない」と批判されても,それを抗弁できる根拠を我々は持ち合わせていない状態です。

研究会の3つの活動

上述した問題を解決するために,本研究会では,3つの活動を行っています。

第1に,「定例の研究会」を実施しています。定例研究会では,論文執筆を目指して1つの統計手法を多角的に学習します。形式は,3時間10分,講義形式,定員35名,4名の発表者というものです。各セクションは,(1) 当該手法を活用した論文の構造化抄録の紹介,(2) 当該手法の理論とデータ解析環境Rの利用法の説明,(3) 当該手法を活用した一流の論文の紹介,(4) 当該手法の研究報告の質向上のためのガイドラインの解説,という構成です。つまり,統計学の基礎から書き方までを,濃密に学習するという活動です。これまで,二変量解析,ロジスティック回帰分析,生存時間分析,傾向スコア分析など,基礎的な統計手法から,比較的新しいものまでテーマとして取り上げてきました。

第2に,「特別枠の研究会」を実施しています。特別枠の研究会では,4時間前後の時間をかけて,大きな1つのテーマを掘り下げています。形式は,講義形式,定員45名,4-5名の発表者というものです。平成25年度は,「患者報告式アウトカム尺度の評価法」と「欠損値処理の理論と実践」という,比較的難易度の高いテーマを取り上げています。

第3に,「学会での教育活動」を実施しています。定例研究会や特別枠の研究会の参加者よりも,研究法や統計学に精通していない方に,研究報告の質向上のためのガイドラインの理解を促すことを主眼としています。平成25年度は,日本心理学会と日本行動療法学会の2つの学会で実施し,盛況のうち終了しました。

意欲の高い参加者

本研究会の最大の特徴は,「参加者が講師になることを参加要件としている」ことです。つまり,研究法や統計学に精通している研究者を講師として招いて,講習を行うという性質のものではありません。「学習する場を提供する」ことを主眼としているので,発表者は,この研究会のために,膨大な量の文献を読むことを強いられます。

こうした発表者に高負荷を与える性質の研究会ですが,参加の状況は極めて良好です。参加の前には,事前予約の必要がありますが,予約開始より1週間ほどで,定員を満たす状況です。参加者は,北海道,福島県,宮城県,富山県,山梨県,群馬県,石川県,静岡県,愛知県,大阪府,兵庫県,広島県,福岡県,沖縄県など,日本全国から集まっています。

 

本研究会の取り組みを,より継続可能性の高いものに変え,日本全国の臨床疫学研究の報告の質を向上させうる人材を増やしていければと考えています。本研究会の主旨を何とぞ御理解いただき,御支援賜りますようお願い申し上げます。

目次: 臨床疫学研究における報告の質向上のための統計学の研究会

 

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著者: 奥村泰之 (Curriculum Vitae)
所属: 公益財団法人 東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野 心の健康プロジェクト 主席研究員
e-mail: yokumura @ blue.zero.jp
Researchmap: http://researchmap.jp/yokumura/
ResearchGate: https://www.researchgate.net/profile/Yasuyuki_Okumura/
Google Scholar: http://scholar.google.com/citations?hl=en&user=c9qyzRkAAAAJ
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